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「うおおっ!?」
ヘビたちの不意打ちを察したのか、慌ててベッドの上に立ち上がると、回避するためにそこから飛び退った。
その拍子に木枷が床に落下して、重い音を立てている。
音から見るに、木枷は頑丈に作られているだろうが……どうやって外したんだ?
驚いて目を丸くしていると、男は壁を蹴って牢の中にいる兵たちを飛び越えようとした。
「くそっ!!」
「副長、下がれ!」
ウチの兵たちは俺を下がらせて、自分たちでどうにかしようとしているが……。
「よいしょっ!」
【蛇の尾】を発動してこちらに向かってくる男を叩き落とすと、床に叩きつけられた男は「ぐはっ!?」と一声漏らした。
起き上がろうとするが、その前にウチの兵たちが上から取り押さえて、その動きを封じる。
大の男三人にのしかかられているんだ。
木枷のように外すわけにはいかないし、今度は動きようが無いだろう。
それよりも。
「折角オレが加減したんだから、押しつぶしちゃわないようにね?」
エキサイトして死なせられたら面倒だ。
冷静になるようにと、男たちを眺めながら一言かけた。
「わかっています。おい、新しい枷を……」
1番隊の兵が男を取り押さえたまま、牢の監視をしていた兵に新しい木枷を取りに行かせた。
男はどうにか抜け出そうともがいているが、出来るわけないし無視していいだろう。
男のことは無視して、俺は床に転がっている割れた木枷を手に取った。
「……内側から割れてるね。腕力でやるのは無理だよな?」
木枷は、腕を嵌める穴の内側から裂けるように割れている。
出来る出来ないはともかく、例えば床や壁に叩きつけて割ったって言うんなら理解出来るんだが、穴の内側からだもんな。
「ふーむ……魔法……かな? どう?」
男は俺の言葉に答えはしないが、一番最初に反応したのはうちのヘビたちだし、加護や恩恵品を隠し持っていたってことは無いはずだ。
昨日捕らえられてから、とりあえず状況の把握と脱出の隙を窺っていたってところかな?
俺たちを見て、「行ける!」って思ったんだろうけれど、甘かったな!
男は抜け出すのを諦めたのかようやく大人しくなったが、先程の俺の問いかけには答える気は無いようで、口を閉ざして俺を睨んでいる。
「まぁ、いいや。もしかしたらコイツが何か知ってるかもしれないし、尋問しといてよ」
等と言っていると、牢の外から複数人の足音が響いてきた。
先程木枷を取りに行った兵と、念のための応援だろう。
人が増えるんなら俺がここにいても仕方がないし、そもそも思い付きで立ち寄っただけだ。
特別用事があるわけでもないし、そろそろここを離れようか。
でも、その前に。
「やって」
ヘビたちに男へ攻撃するように命じた。
「ぐぁっ!?」
男は呻き声を一つ漏らして、ガクッと頭を下げた。
「……何をしたんだ?」
「うん? 気を失っただけだよ。またなんかされたら面倒でしょう? とりあえず魔力だけ減らしておこうかと思ってね」
「なるほど……そりゃ助かる。おい、やってくれ」
2番隊の兵が男の両腕を前に突き出すと、その腕に木枷が嵌められた。
そして、警戒のためか、新たにロープで腕と脚を縛った。
魔力はゴッソリ奪ったし、とりあえず再尋問する間は大人しくなっているだろう。
「こいつが何をしたかったのかはまだわからないけど、とりあえずこれから冒険者ギルドに向かうし、団長たちに伝えておくよ」
俺は男の様子を見て「うむ」と頷くと、兵たちに向かってそう言った。
◇
さて、ひと騒ぎあった騎士団本部から、今度は街に繋がる地下通路に入って冒険者ギルドに向かっているんだが、やって来た時と違って同行人が一人いる。
騎士団本部に詰めていた、1番隊のお偉いさんだ。
ちなみに、先程の現場には、部屋で仕事を片付けていたため立ち会っていなかったが、同行は彼自身が名乗り出た。
「……わざわざついて来なくてもいいのに」
俺の言葉に、彼は首を横に振って答えた。
「いえ、不在を任されているのに牢で騒ぎを起こしてしまったのです。せめて団長や隊長に直接伝えなければ……」
まぁ……責任者ってのはそんなもんなのかな?
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・4枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




