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アレクの髪が焦げた件で衝撃を受けていたエレナだが、話を進めるにつれて、想像以上に手こずっていたことがわかり驚いていた。
聞いてみたところ、魔物の群れを追い詰めることには手を焼いたが、戦闘自体は順調だったと報告を受けていたらしい。
まぁ……確かに死者も重傷者も出ていないっぽいし、その報告は間違ってはいないんだが、ピンポイントで見ると意外と大変だったんだよな。
エレナもその件はもう少し詳しく聞きたいようで、風呂を出て髪を乾かして貰いながら話を続けている。
「……アンデッドとの戦闘経験は私もあるけれど、そこまでしつこいのとは戦ったことがないね」
「だよね。オレはあの持って帰って来たコウモリを追ってその場を離れていたから、動き始めたところは見ていなかったんだけど……」
あのウネウネ動いているヘビの死体の破片が頭の中に浮かんで来て、一度言葉が途切れた。
いやぁ……アレはよくよく考えると、大分気持ち悪い光景だったよな。
「だけど?」
頭の上から、エレナの声が続きを促してくる。
「あぁ……うん。オレも途中からヘビの方の戦いにも参加したんだけど、なんか凄かったね。斬っても叩き潰しても動いてたし。流石に体をズタズタに切り裂いたら動きが鈍っていったけど……しぶとかったね……」
「テレサたちの魔法で仕留めたんだよね? ヘビの魔物自体がしぶとい生き物だし、それがアンデッドになったらそうなるのかな?」
「なるなる。そもそも最後倒したアレって、お腹に大穴空いてる状態だったからね。それが死因なのかもしれないけど、その状態であれだけ動き回るんだから……」
そう言って「はぁ」と溜め息を吐くと、エレナはドライヤーの魔法を止めて、タオルを頭の上に置いた。
髪は乾いたのかな?
「少なくともこの辺りでは見なかった魔物だね。死体を確保出来ていたのなら、フィオーラや冒険者ギルドが調べてくれたかもしれないけれど、危険すぎるか……」
「だろーねー。倒すだけならジグさんとかフィオさんなら可能だろうし、他の人でも【ダンレムの糸】を使えば十分出来ると思うけど……アレを運び出すのは危ないよ」
頭を潰した方ですら動いていたんだ。
たとえ細切れにされていたとしても、アレを街の中に入れるのは止めて欲しいな。
せめてもっと弱い……。
と、そこで一つ思い出した。
「あぁ、でもサルのアンデッドならバラバラにしたら運べるかな?」
あっちはバラバラにして放置したままだ。
もしかしたら、それでも動いたりするかもしれないが、ヘビに比べたらサイズはずっと小さいし、ちゃんと監視していたら持ち運んでも大丈夫じゃないかな?
今からそのことを伝えに行けば、処理をする前に回収が間に合うかも。
そう思い椅子から立ち上がろうとしたが、その前に肩をエレナに抑えられた。
「テレサたちがいるのなら大丈夫だよ。それよりも、君は途中休憩していたけれど、昼間から動きっぱなしでしょう? 無理はせずにゆっくり休みなさい」
俺が思いつくようなことなら既にテレサたちが動いているか。
それに、いい加減休もうって決めて風呂に入ったのに、上がってそうそうにまた出て行こうとするなんて、俺っぽくないにもほどがある。
久々に長時間外を飛び回りながら戦っていたから、ハイになってるのかな?
「ふぅ……それもそうだね」
俺は大きく息を吐くと、もう一度椅子に座り直した。
その代わりに、背後でエレナが椅子から立ち上がった気配を感じた。
「さて、終わりだね。今の話は執務室の皆に伝えるけれど、構わないかな? もちろん、まだ外部の者が残っているから、話せる内容は選ぶけれどね」
「うん。それはお任せするよ」
テレサたちが戻って来てからも報告はするだろうけれど、事前に情報をある程度知っている方が話は早く進められるだろう。
俺はエレナの言葉に頷いた。
「さて……と。それじゃあ、私はこれで戻らせてもらうよ。お休み」
そう言って、エレナは部屋から出て行った。
そして、部屋に一人になった俺は【浮き玉】に乗ると、寝室へ向かうことにした。
森の中で戦闘を行ったし、恩恵品の手入れもしたいが……今日はもう寝よう。
話し相手がいなくなったら眠気が襲って来たし、手間がかかることは明日だ!
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・4枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




