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やって来ました、中層入口。
浅瀬、上層と、【浮き玉】を飛ばせばここまで10分ちょっとで辿り着ける。
通常だとあまり途中の魔物を無視していくのはいいことでは無いが、今日もダンジョンは盛況で、むしろ魔物の数が足りない位だからそこは気にしなくてもいいだろう。
気を付ける事と言えば俺が魔物と勘違いされる事位だが、王都での一件もあり、冒険者ギルドに俺の事は周知させるよう言ってくれてあるから、問題無いはずだ。
ふっ……経験が生きたな。
ちょっとアレなテンションだが、しばらく我慢させられたオーガをようやく倒す目処が立ったんだ。
仕方が無い。
通路の出口が見えたところで【祈り】と【妖精の瞳】にアカメの目を発動する。
自分の目だとまだ見えないが、これだけやれば壁越しにオーガの姿が見える。
俺が通路に侵入したことが分かったのか、既に石を手にしている。
今までならそのまま投石を避け続けるも、近づくことが出来ずに撤退だったが……今日は違うぞ?
「ふっ!」
一息吐いて、気合を入れ【浮き玉】の速度を上げる。
それを待ち構えていたかの様に、姿を見せ投石を始めた。
いつも通りだ。
この投石は直撃狙いではなく、壁や天井に当て、破片でこちらの妨害をする事が目的だ。
実に頭がいいじゃないか。
でも、もう効かない。
「ほっ!」
背中に背負った新兵器を手に取り、バンッとソレを開く。
直径50センチ程、丁度子供サイズの日傘だ。
骨組に魔鋼と魔木を。
合金じゃ無く、純度100パーセントの魔鋼だ。
柄の部分が魔木で作っていて、硬い上に、魔力の通りがいい。
おかげで2キロ近くになってしまったが、どうせ【浮き玉】から降りる事は無いのだし、その位なら支障は無い。
布は、表地に俺が使っているケープや騎士団のマントと同じ、頑丈で撥水効果がある物を。
そして、裏地には魔糸で耐熱、耐防の刺繍をびっしり施している。
領都の各職人にフル稼働してもらい5日で仕上げてもらった。
材料の大半を持ち込みにも拘らず金貨50枚近くし、更に、王都で貯めたミネアさんへの貸しを全部使ってしまったが、十分満足いく仕上がりだ。
バラバラと破片を弾く音がするが、徹底した甲斐あって、俺はもちろん傘にも傷は無い。
傘を開いた状態だと視界が遮られるが、諸々を発動している俺の目なら、傘越しでも動きがわかる。
投げた瞬間だけずらして、石のコースを確認すれば問題無い。
想像以上に上手くいっている!
「よし……抜けたっ!」
広間までもう後わずかとなった所で傘を閉じ、一気に加速し片方の脇をすり抜けながら頭部にある核を貫いた。
【影の剣】はオーガ相手でも通用するようだ。
その手応えを感じながら、天井近くまで上昇しオーガ達の布陣を見下ろす。
「多いな……これは」
全部で18体いる。
20体前後とは聞いていたが、いざこうやって見てみると、中々ド迫力。
どうやら俺を敵と定めたようで、サイズ2メートル前後の集団が敵意を込めて俺を睨んでいる。
下からとは言え、これは怖い。
「……どうしたもんかな」
倒さなかった方と、更に他所にいた投石組もやって来て、石をポンポン俺目がけて投げている。
流石に天井付近にいる相手へのノウハウは無いようで、ただ上に投げているだけで当たりはしないが……、この戦略の蓄積ってどうなってんだろうかね?
個別なのか、クラウド的なものなのか……あまり変な経験積ませない方がいいかも知れないな。
少しずつ離れていくと、投石組はついて来るが他はその場を離れようとしない。
破片にも気を付ける必要がある通路でなければ、ただ石を投げてくるだけで、さほど脅威とは言えない。
このまま引きながら削って行けそうだ。
「んじゃ、やりますかねー」
傘を背中に回し、アカメをいつでも出せるよう左手を空ける。
【緋蜂の針】を発動し、準備完了だ。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・30枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚