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ゼルキス領都にあるダンジョンは、妖魔種が現れる。
ゴブリン、コボルト、オークにオーガといった、要は2足歩行の人型の魔物だ。
どれも通常種に加えて上位種が存在し、上位種が統率している集団は強い傾向にある。
体の大きさはもちろん【妖精の瞳】で見ても、その違いは明らかで、上位種は通常種よりもずっと強い。
と言っても、通常種だろうが上位種だろうが俺にとっては大したことない。
浅瀬にいるゴブリンは、一気に蹴散らし、上層へ。
上層手前に現れるコボルトは、見た目は2足歩行のイヌだかオオカミで、場合によっては他の集団と連携を取っている。
偶々戦闘をしている冒険者パーティーが囲まれているのを見かけたが、こちらも負けじと他のパーティが救援に向かい、事なきを得ていた。
足を止めさえしなければ、ゴブリンと大差無い。
更に上層奥へと進むと、オークが出てきた。
こちらは、2メートルオーバーのでっぷりした巨漢だが、ブタさんではない。
何というか……のっぺりした変なのだった。
ただし、その巨体に見合うパワーを持っており、下手な受け方をしたのか、盾を構えた冒険者が吹き飛ばされるシーンに出くわし、思わず参戦してしまった事がある。
まぁ、強い事は強いが、数もゴブリンやコボルトと違い一度に出てくるのは2~3体でと少なく、そもそもどんな攻撃を受けても割と致命的な俺からしたら、鈍重な分むしろ楽な相手と言える。
ゴブリン、コボルト、オーク。
ここまでは、はっきり言って俺には雑魚だ。
数が多かろうが、力が強かろうが、相手ではない。
ただし、中層から現れる、オーガ。
体の大きさこそ2メートル前後とオークより小さいが、こいつはヤバい。
中層は王都のダンジョンの上層と似た造りで、広いホールが通路で繋がっている。
その1部屋1部屋に大体20体前後の集団で陣取っている。
最初中層に入り、通路からホールに踏み入った時、手前の2体が俺の頭位ありそうな大きさの石を投げて来た。
まだ距離があった為避ける事は難しくなかったが、相当な速さだった。
何という強肩……。
問題は、直撃はしなくても、天井や壁に当たり砕けた破片にも気を付ける必要がある事だ。
ある程度まともな防具を身に付けていれば、そこまで脅威では無いだろうが、俺のは防具ではなく、ただの服だからな……。
後で聞いたことだが、オーガは集団の外周に投石の得意な個体が配置されるそうだ。
とにかく遠くから石をバンバン投げてくる。
オーガと戦うには、盾を持った守りの堅い者を先頭に、一気に通路を突破し、その投石役を倒してから内側に切り込んで行くそうだ。
尤も、中心に集団のボスがいて、内に入るほど強い個体がいる事が多く、倒し切る事は簡単ではないそうだが……。
オークからの難易度の跳ね上がり方が尋常ではなく、また、上層までは連携する事はあっても少人数パーティーでの方が効率が良い事から、大人数での探索の経験が無く、人を集める事が出来ない者はここで躓くらしい。
俺も躓いた。
◇
開拓の話が出てからというもの、ゼルキスへやって来る冒険者が増えたらしい。
本格的に始動する前に、領都のダンジョンで腕を磨こうとしているのだろうか、その大半は領都圏に滞在し、ダンジョンに日々通っている。
あくまで彼らの目的は開拓であって、ダンジョンではない為、本腰を入れての探索はせずに上層付近をうろうろしている。
つまり、めちゃくちゃ混んでいる。
一応ミュラー家付きである俺がその彼等を押しのけて狩りをするわけにもいかず、仕方なく中層に挑んでは通路を突破できずに退散、というのを繰り返していた。
「失礼します」
セリアーナの部屋で、セリアーナは書き物をし、エレナはその手伝いを。
俺はゴロゴロしているいつもの昼下がり、部屋に使用人がやって来た。
「どうしたの?」
「はい。セラに来客です。1階西の応接室に通しています」
わざわざ領主の屋敷までやって来る俺の客……来たかっ!
「すぐ行きまーす!」
待っていろ……オーガども‼
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・30枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚