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「あ、おかえりー」
馬車から荷物を運びこみ整理も終わり、皆は他の手伝いに向かい、俺はセリアーナの部屋で留守番をしていたのだが、1時間程でセリアーナ達が部屋へやって来た。
「待たせたわね。ここじゃ無くて奥で休んでいてよかったのよ?」
「他の部屋入る許可貰ってないからね」
王都の屋敷は私室と寝室の2部屋だったが、ここ本宅は更に応接室があり、そこから奥の2部屋に繋がっている。
アレクもだが、俺は基本的にこの応接室までしか出入りしていなかった。
「お前、変な所で律儀ね……。まあいいわ。片づけは済んでいるのかしら?」
「【隠れ家】のはまだだけど、馬車に積んでいた分は終わってるよ」
と言っても、【隠れ家】の荷物も整理してあり、ケースから出して棚に入れるだけだ。
強いて問題を上げるなら、重たい位か?
「そう。なら先にそちらを片付けましょう」
そう言い、奥へのドアへ向かっていった。
「俺は中から出すか。セラ、【隠れ家】を頼む」
「はいよ」
アレクは力仕事を引き受けてくれるようだ。
壁に【隠れ家】を発動し、中へと招き入れた。
◇
「ご苦労様。楽にしていいわよ」
まずは【隠れ家】から全部出し、アレクがそれを運びエレナが片づける。
何だかんだで20分程で終わった。
一応俺も手伝ったのだが、本にせよ服にせよまとめて運ぶ方が効率が良く、あまり役に立った気はしないな……。
お茶を入れたくらいだ。
「夜はリーゼルの紹介も兼ねて領内の人間を招くから、今のうちに先程決まったことを話しておきましょう」
「ほい」
実は、何となくそのうち俺達もルトルに移るって事くらいしか知らなかったりする。
そこら辺の説明も聞いておきたいな。
「リーゼル達の人員が到着次第ルトルに移る事は知っているわね?開拓自体は既にある開拓村を拠点に進めてあるわ。アレクが王都で声をかけた冒険者達もそこで魔物達の討伐を行っているそうね」
「ラギュオラの牙」以外にもいくつかのクランや冒険者達に声をかけていたが、元気にやっているらしい。
顔を知っている相手も多いし、何よりだ。
「しばらくはルトルを拠点にして、記念祭あたりから本格的に街づくりに取り掛かるそうね。私達が移動するのは結婚してからよ」
式は記念祭の時に挙げるそうだし、秋頃からなのか。
1年以上先だな。
「俺は連絡役としてちょこちょこ出向く事になるからな。その間は頼むぞ」
と、隣に座るアレクが言ってくる。
ここからルトルまで馬車で10日位だったが、1人でならもう少し早いかな?
「うん」
まぁ、ここでなら護衛がいる様な事はそうそう無いだろう。
「ジグハルト達はしばらくは屋敷の別棟に滞在して、ダンジョン探索をするそうね。その後彼等もルトルに移るそうよ。本格的に戦力が揃うまでは魔物の討伐も抑えめにしてもらうから、【竜の肺】は当面お前が持っていなさい」
「はーい」
「私は来年の春の3月に王都へ行くけれど、それ以外でここを動くことは無いわ」
てことは、あまり俺のやる事は変わらなそうだな。
「オレは好きにしていていいの?」
「そうね。街から出なければ自由にしていて構わないわ。平民用の学校があるけれど……必要は無さそうだけれど通いたい?」
平民用か……確か午前中だけの読み書き計算を学ぶところだったはず。
俺には必要ないな。
「止めとく。ダンジョンの上層以降の許可が欲しいな」
ここのダンジョンはまだ浅瀬までしか許可が出ていない。
去年はまだ潜り始めたばかりだったから、許可が下りないのも仕方ないけれど、今の俺ならそれこそ魔人でも出てこない限り、そうそう危ないことは無いはずだ。
王都のダンジョンで大分バラエティに富んだ魔物達の相手をしてきたし、妖魔種中心のここのダンジョンでも、行けると思う。
「どう思う?」
セリアーナはエレナとアレクを見て言った。
「私は問題無いと思います。アカメや【妖精の瞳】もあるから不意打ちにも対処できるでしょう」
「同じく。もし勝てない様なのがいたら、こいつならちゃんと逃げきれます」
中々の好感触。
「結構。私から伝えておくわ。ただし、2日に1度、1時間。これは守るように。いいわね?」
「はーい」
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・29枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚