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【妖精の瞳】は生物の体力と魔力が、光になって見えるようになる恩恵品だ。
あまり体が小さかったり能力が弱すぎると、光りが小さすぎて見えなかったりもするが、ゴブリンサイズ程度の生物なら、そうそう見逃すことはない。
だが……この距離で見えないとなると……。
そもそも、小指の先ほどの小ささではあるが、木の上にいる何かは見えているんだ。
影になっていて、正体が何なのかはわからないが、姿が見えているのに光りは見えない……これはおかしい。
出来れば周囲を飛び回ってじっくりと観察をしたいところだが、どうやらそんな余裕はなさそうだ。
「行くぞ! セラ、お前は俺の後ろに入れ。テレサ、アンタが魔法で牽制を! リックとルイは俺に合わせろ!」
アレクはそう言うと、一気に走り出した。
すぐ側が水辺だし、これ以上どこかへ移動するってことは無さそうだけれど……それでも、万が一に備えて早さを優先するみたいだな。
リックとルイもアレクに遅れないように、すぐ後ろを走っているし、テレサも魔法を撃つために、間に障害物がない場所へ移動している。
ボスの正体はともかく、アレが何かってのは何となく予測出来ている。
詳しく調べるのは倒してからでもいいよな。
「ほっ!」
【祈り】を始め、各種加護を再発動した俺は、【浮き玉】を加速させて、前を走るアレクの背を追った。
◇
俺はアレクの後ろについていたが、一旦上空に上がると地形と周囲の確認をした。
木の奥に見えた水場は小さな川で、西に向かって流れている。
領都の側に流れる川とは別の川だろうし、領内のどこかの川と合流するのかもしれないな。
深さはわからないが、幅は精々10メートルほどで、生物の気配は感じられない。
一方、ボスが上っている木の根元周辺の草むらに、ヘビの魔物が潜んでいる事に気付いた。
強さは大したことないが、毒でもあったら厄介だしな。
少し離れてはいるが、ボスがいる木の北側にオーガか何かの群れがいるし、纏めて報告だ。
「皆! 木の根元にヘビみたいなのと、北の方に大型の妖魔種がいるから気を付けて! あと、木の裏には小さな川が流れてる!」
「おう! テレサっ!!」
「ええ!」
アレクの合図に、テレサが樹上に魔法を放った。
威力は抑えているが火系統の魔法で、木の幹に当たると同時に爆発して、周囲が赤く照らされた。
爆発音に閃光……どちらも不意打ちだし、ダメージは大したことなくても、確実に決まったはずなんだが……爆発以外は何の変化も無い。
「……反応なしか。それならっ!」
アレクはそう言うと木に向かって駆け寄り、着弾して抉れた箇所を【赤の盾】で殴りつけた。
その一撃がどれだけの威力があるのかはわからないが、魔法のダメージもあって、ベキベキと音を立てながらゆっくりと倒れていく。
リックとルイも前に出て来て、地上に落ちたボスを逃がさないように構えている。
アレクとテレサもいるし、地上はこのまま皆に任せていいだろう。
「オレは上を見るね!」
そう言って、俺は倒れ始めた木に向かって飛んで行った。
今ボスがいる木は倒れるが、その前に他の木に飛び移られたり、川に飛び込まれでもしたらちょっと面倒になる。
たとえ川に逃げようと、俺なら追いつくことは簡単だが、他の4人は難しいし、そうなると俺だけでどうにかしないといけなくなるからな。
よくわからない相手に……それも水中に引きずり込まれる危険がある状況で、一人で対応したくはない。
そうならないように、いざとなれば空中で撃ち落としてやる。
俺は気合いを入れると、倒れかけている木を飛び越えて裏に回り込んだ。
「ほっ!」
倒れる最中の木の枝に、適当に照明の魔法を放った。
これで明るくなったし、暗闇に紛れて逃げるのは無理になっただろう。
ついでに、ボスの正体も見極めてやろうと思ったんだが……。
「……っ!? 何体もいるよっ!?」
木の枝にしがみついていたボスは、俺の魔法ではっきりと見えたんだが、1体だけじゃなくて何体もが同じ枝にしがみついていた。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・4枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




