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「そろそろかしら?」
【隠れ家】内でモニターを眺めているセリアーナが呟いた。
王都を発って10日。
領地に入り領主の下で2泊し、また出発。
最初のエルスト領でやった事を2度繰り返し、今日はいよいよ山越えだ。
「そうだね。もう出とこうか?ヘビ持ってく?」
各領地の騎士の巡回のお陰で、魔物はもちろん、見た事は無いがいる事はいるらしい野盗とも遭遇せず、ここまでは何事もなく順調そのもので、セリアーナのスキルにも何も反応が無かったそうだ。
ただ、今まで何も無かったからと言って、山の中でもそうだとは限らない。
スキル自体は【隠れ家】の中からでも効果はあるが、場合によってはセリアーナが指示を出す可能性もあるので、馬車の中にいた方がいい。
「そうしましょう。ヌイグルミは……そうね。持って行くわ」
「毛布も持って行きましょう。中と違い、馬車は冷えますから」
武装馬車には簡易的な暖房が付いているが、日差しが遮られる場所も多いだろうし、さらに冷えるかもしれない。
俺も厚着しておこう。
「さ、行きましょう」
◇
【隠れ家】から出ると先に出ていたセリアーナはスキルを発動する準備に入っており、エレナはその事をアレクに伝えている。
「セラ、厚着はしてきた?」
「うん」
ケープに毛糸の帽子、マフラー、腹巻。
そして、俺の戦闘スタイルに合わないから普段は身に付けないが、手袋と靴下。
すぐ脱ぐことになるが、完璧だ。
「お嬢様が加護を発動されるから、隊長達や他の馬車に伝えて来てくれるかな?」
「りょうかーい」
返事をし、馬車のドアを開けると冷たい風が入り込んできた。
慌てて外に出てドアを閉めるが、外に出ている人達は大変だな……。
山に向かう道は人通りが少ないのか、雪がまだまだ残っていて、滑らないように速度が抑えめになっている。
「セラ、まずは隊長に伝えるんだ」
どこから行こうかと考えていると、アレクが指示を出してきた。
「はいよ」
伯爵達の馬車を追い越し、アレクの指示通りこの護衛隊の隊長の側に行く。
「む?セリアーナ様の従者だな。何かあったのか?」
俺が近づいた事に気づいたようで、声をかける前に振り返って来た。
この強面……中々やりおる!
「うん。お嬢様が加護を発動されたからその報告に。もし何かあればうちのアレクが指示を出しますね」
「ふむ。その事は聞いている。指示に従おう」
「お願いします。では」
俺は参加していないが、護衛同士で事前に打ち合わせでもしていたんだろう。
話はすんなり通った。
次は、ジグハルト達だ。
昨日までは俺達の乗る馬車が先頭だったが、今日は強力な遠距離攻撃手段が2枚ある伯爵達の馬車が先頭にいる。
御者に挨拶をし、馬車のドアをノックすると、すぐに開き中へ入れられた。
「そろそろか?」
俺が口を開く前にジグハルトが言って来た。
こっちも大丈夫そうだな。
「うん。お嬢様が加護を使うから、なんかあったらアレクが指示を出すね。……聞こえるかな?」
馬に乗っている隊長達と違い、こっちは馬車の中だ。
細かい部分を聞き逃さないだろうか?
「そうだな。ジグハルト、後ろの小窓を開けておきなさい」
話を聞いていた伯爵が指示を出す。
見ると既にブランケットの様な物も用意してあるし、準備は万全だ。
「今はまだ何も無いのかしら?」
【竜の肺】を見せながらフィオーラが聞いてくる。
「うん。今の所は何もないみたいだね。ここまでの道中も何も無かったみたいだよ」
「そう。ならまだ使わなくていいわね」
そう言い【竜の肺】を襟から服の下へと戻す。
消耗はしないはずだけど、まだ発動しない様だ。
「うん。それじゃーよろしく」
お次はリーゼル達の馬車だ。
まぁ、あそこが戦う様な事があるとしたら罠にかかった時位だし、出番は無いだろうな。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・29枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚