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オーギュストが用意しているのは、冒険者ギルド宛ての指令書だ。
冒険者たちの指揮をテレサに任せるためだな。
「姫」
さて、俺たちはセリアーナの机の周りで、オーギュストが指令書を書き終えるのを待っていたんだが、ふとテレサが声をかけてきた。
「うん? どうかした?」
「はっ。姫の【赤の剣】をお借りしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「アレを? いいけど……使うほどかな? 【小玉】も持ってく?」
部屋に置いたままの、実質テレサ専用の【赤の剣】は強力な恩恵品ではあるけれど、北の森の魔物程度なら普段のテレサの剣だけで十分だろう。
それよりも、森での機動力を補える【小玉】の方がいいんじゃないかな?
だが、テレサは「ありがとうございます」と礼を言いつつも、首を横に振った。
「冒険者たちの士気高揚のために、数体派手に倒す必要があるだけですから。それ以外は馬上で指揮に専念するつもりです」
「……あぁ。一の森の側だと、あんまり魔法とかは使わない方がいいしね」
騎士団の指揮ならともかく、冒険者相手ならとりあえず派手に一発ドカンとやっておいた方が、指示の通りは良いだろう。
それに、指揮を執るなら足並みをそろえた方がいいだろうし、【小玉】よりも馬の方が向いているか。
テレサの言葉にふむふむと頷いていると、どうやら指令書を書き終えたらしいオーギュストが、席を立ってこちらにやって来た。
「テレサ殿、待たせて済まない。コレを……。そちらの話はもう終わったか?」
「ええ。それでは、姫、奥様。行ってまいります」
オーギュストから指令書を受け取ったテレサは、スッと礼をすると足早に部屋を出て行ったが、それを見送りながらふと思いついたことが一つ。
「オレもついて行った方がいいかな?」
テレサが出るのは冒険者の指揮を執るためだが、どうしても騎士団と冒険者との連携も必要になるだろう。
アレクがいるし、2番隊は元冒険者の集団だからそれなりに合わせる事は出来るだろうけれど、参加する冒険者たちのメンツ次第じゃ動きが読めないかもしれない。
仕事は出来るかも知れないが……なんといっても、舞い上がってる連中だらけの可能性もあるしな。
場合によっては、テレサですら手に余るかもしれない。
それなら、連絡役として俺も行った方がいいと思うんだ。
どうかな……と皆の顔を見ると、オーギュストが即座に首を横に振って答えた。
「いや、まだ外がどう動くかはわからない。恐らくセラ副長にも出てもらうことになるだろうが、今はまだ待機した方がいいだろう」
「む、そう?」
オーギュストの言葉に首を傾げると、ジグハルトがさらに続けてきた。
「そうだな。必要になればテレサが人を寄こすさ。それに……起きるかどうかは微妙だが、俺が出るような事態になった時に、お前がここにいる方が各所に伝達が手早く出来るだろう?」
「……それもそうだね」
ジグハルトが出るってことは、街が魔物に直接襲われるか、一の森の魔物がつられて出てくるか……。
どちらにせよ、ただ事ではないような事態だ。
ジグハルトが言うように、そんな事態が来るかどうかはわからないが、それでも一応備えておく方がいいだろう。
俺は二人の言葉に頷いた。
◇
テレサが出動してからしばらくすると、下の研究所に籠っていたフィオーラが、疲れた様子で執務室にやって来た。
「お疲れ様。ポーションの配給は済ませたし、下での仕事は終わったわ。……私もここで待機させてもらうわよ」
フィオーラは研究所で、今回の件で必要になるであろうポーションの作成はもちろんだが、配給の手配もやっていたらしい。
普段とは違う仕事をしたんなら疲れてもおかしくないかな?
「ご苦労様。今のところ貴女に出てもらうような報告は入っていないわ。ゆっくり休んでいて頂戴」
「僕たちのことは気にせず楽にしていてくれ。……フィオーラ殿、素材は大丈夫だったかい?」
「ええ。ここ数日の魔物の討伐で、想定していたよりも消費しなかったから足りないなんてことは無かったわ」
フィオーラは、セリアーナやリーゼルに短く答えると、そのままジグハルトの隣にドサッと座り込んだ。
……これは大分お疲れっぽいな。
【祈り】を使うのは控えているけれど、肩くらいは揉んであげようかな?
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




