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「生き残りは!?」
槍に刺さったゴブリンの体を、ふるい落としながらリックが叫ぶと、包囲の東側で戦っていた兵の一人が駆け寄っていった。
「……隊長! こちらは全て片付きました。残りも」
上から見ていたが、リックはずっと先頭で走り回りながら目につく魔物に仕掛けていて、止めは他の者に任せていたからな……。
そこらへんは、聖貨や素材の獲得にこだわる必要が無い騎士団ならではの戦い方だ。
「冒険者たちはどうか?」
「はっ。包囲から抜けた魔物はおらず、外への被害は出ておりません」
「そうか……。セラ副長!」
「はいはい。聞こえてるよ」
リックの声に答えながら、俺は彼等のもとに下りて行った。
「いやー……オレが戦闘に参加する隙が無かったね」
「構わん。我々だけで手が足りていたのに、無理に参加する必要は無いだろう。その代わり、上から見ていたな? 討ち漏らしはないはずだが、どうだ?」
「うん。まだ息があるのはいるけど、どれも瀕死だよ。包囲からは抜けていないし、とりあえず森から出てきた魔物は全部倒してるね。それで……」
俺はそこで言葉を中断すると、ジッと北の森を見た。
戦闘時には森の端にチラホラ見えていた魔物たちが、今はすっかりいなくなっている。
ボス共々引き上げたか。
「森に潜んでいた魔物たちは下がったか?」
「うん。戦闘が終わりそうになった頃に纏めて森の奥に下がって行ったよ。……追う?」
今から追えば、まだまだ間に合うかもしれない。
相手がよくわからない状況で、魔物を追って森に入るのは少々危険ではあるが、これだけの戦力が揃っているのなら、まぁ……大丈夫だろう。
だが、リックは首を横に振ると、後ろを振り向いた。
リックの視線の先には、避難していた連中の姿がある。
「いや、まずは死体の処理と、あの連中を尋問することが先だ」
そう言うと、リックは兵たちに指示を出し始めた。
尋問って言葉はあまり穏やかじゃないけれど、それでも連中が何か知っているかもしれないし、ここはしっかり聞き出して貰わないとな。
俺はリックの背中を眺めながら、そんなことを考えていた。
◇
「よう、副長」
リックたちの作業を眺めていると、横から俺を呼ぶ声がした。
「うん? やー、お疲れ様。急な要請でごめんね。助かったよ」
声をかけてきたのは、救援に駆け付けた冒険者たちだ。
見た感じ……多少の疲労の色はあっても、傷を負った様子は無い。
まぁ、俺が見た限り魔物は包囲を抜けていない。
彼等はその輪の外からの遠距離攻撃がメインで、直接魔物とぶつかることは無かったし、当たり前か。
ともあれ、話しかけて来た冒険者は、俺の言葉に笑って答えた。
「大したことねぇよ。騎士団の連中が魔物を抑え込んでいたしな……アンタが一緒にいるが、アレは1番隊だよな?」
「うん。街の巡回していた部隊と、そっちと一緒で救援に来た隊だけど、どっちも1番隊だよ」
「……アイツら魔物相手も動きは悪くないな」
「ね。まぁ、訓練自体はいつもしてるし、アレくらいなら余裕なのかもしれないね」
彼は「それもそうか……」と肩を竦めると、打って変わって真面目な表情で話しかけてきた。
「ダンジョンも使ってるしな……。まぁいい。それよりも、追わないのか? アレだけの群れなんだ。率いているのがいたんだろう?」
「そうだな……俺も牽制をしている間森を見ていたが……何かが潜んでいた気配はあったな」
どうやら冒険者の中には勘がいい者もいるようで、潜んでいることに気付いた者もいた。
それに、元々この辺で活動している冒険者だ。
あの魔物たちを見て、どんな群れなのかって想像出来るんだろう。
「うん……と言っても、オレもなにかがいるってのしかわからないけどね。リック君にはそれを伝えたけど、とりあえず、事態の把握を優先するって」
先程のリックの言葉を彼等に伝えていると。
「セラ副長!」
兵の一人が、俺の名を呼びながらこちらに駆け寄って来ている。
「リック君からかな……? ちょっと行ってくるね」
リックたちは商人たちを尋問していたんだが……何かわかったのかな?
とりあえず、冒険者たちに周囲の警戒を任せて、俺はリックたちのもとに急いだ。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




