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「あっち!」
門から出た俺たちは、とりあえず警備の兵が固まっている場所へ向かうことにした。
避難して来た者たちを内側に、半円状に布陣しながら徐々に後退しているが、全員徒歩だし装備も比較的軽装だ。
彼等だけで避難して来た者たちを守りつつ、救援が来るまで耐えるってのは難しかったかもしれないな。
巡回中に早めに気付いてくれて良かったよ……。
「多いですね……。我々は馬がありますが彼等はありませんし、下手に動かさない方がいいでしょう。撹乱する隊と彼等を守る隊に分かれようと思いますが、どうでしょうか!」
先頭の彼はそう言っているが、既に彼等は二手に分かれている。
「うん。オレは一人で突っ込むから、そっちは適当に任せるよ!」
この手際の良さは、あらかじめこういう事態を想定した訓練をしているってことだろう。
立場上は俺が指示を出す役割ではあるんだが、慣れない指揮を執る必要は無いっぽいし、このまま任せてしまおう。
俺は彼の言葉に答えると、この巡回の隊から離れて、一足先に警備兵たちのもとへ急いだ。
◇
「無理をするな! 応援は呼んでいるんだ。時間を稼ぎさえすればいい!」
俺が突っ込んで行くと、そんな声が前から聞こえてきた。
その声の主は、さらに周りの者たちを鼓舞するように声を出し続けているし、彼が隊長かな?
彼の声に合わせて、周りの兵たちが近づいて来る魔物を追い払っている。
倒すよりも、とにかく牽制し続けて近づけないようにしているんだろう。
小型の魔物ばかりだし、その気になれば倒すことも可能なんだろうが、その場合はどうしても陣形に穴が出来てしまう。
それを避けるために、ひたすら防御か。
……中々の徹底具合だ。
ともあれ。
「とりあえず、あそこだな!」
彼のもとに行って一言伝えれば、後は後ろの連中が上手い事どうにかしてくれるだろう!
我ながら投げっぱなしだが、多分これが一番互いに力を発揮出来る分担の仕方のはずだ。
「お待たせ!」
近付いてくる魔物を、一旦追い払ったタイミングを見計らって、俺は一気に距離を詰めて彼等の前に降り立った。
「おおっ! セラ副長。お待ちしておりました!」
男の声に、俺は短く「うん」と一言だけ答えると、まずは前方の魔物たちを見渡した。
小型の妖魔種に小型の魔獣がメインだが、様子見なのか森の端に止まってこちらを見ている。
しかし、距離があるとはいえ、俺が姿を見せたのに逃げたりはしないようだ。
発動している加護は【風の衣】のみ。
魔物を威圧するには少々迫力が足りないかな?
装備も戦闘用の恰好じゃないから、それもあるかもしれないが、普段だと俺が目の前に現れると、このレベルの魔物なら警戒して下がったりするんだが、下がるどころか離れて様子見していた魔物すら近付いてきている。
あまり呑気な真似は出来そうもないか。
「すぐに隊の残りも来るから、指示は彼らに聞いて!」
俺はそれだけ伝えると、返事を待たずに魔物の群れに向かって突っ込んだ。
◇
今目の前にいる魔物たちを、一先ず第一陣とするが、その第一陣の数は10体ちょっと。
中規模の群れなら、これくらいよく見かけるが……その場合は纏め役である中型や大型のボス格の魔物が一緒の場合がほとんどだ。
だが、今回はそれが見当たらない。
まだ森に止まっている魔物もいるが、その中にいるのか、あるいは元から存在しないのか。
ボスがいないってことは、群れごとや群れ同士が連携をして襲ってくることはないだろう。
それは、今回のように防衛側に立っているだけなら、一度に襲い掛かってくる可能性は低いし、ありがたいことなのかもしれないが、反面、そいつを仕留めたら群れが瓦解する……ってことも無くなるんだよな。
ベストコンディションとベストの装備なら大したことない数だが、チマチマ戦うにはちょっと面倒になるかもしれない。
だからと言って、放っておくことも出来ないし、とりあえずやれるだけやっておこう。
「すぅー……ふっ!」
俺は突っ込みながら深呼吸を続けると、最後に息を強く吐いて【影の剣】と【蛇の尾】を発動した。
まず倒すのは、正面にいるゴブリンからだ!
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




