125
「セラさん、今日は付き合わせて悪かったわね」
帰りの馬車で向かいに座るミネアさんが謝罪をしてくる。
もっとも微笑……というより苦笑だが、笑いながらなので、本気じゃ無いんだろうが。
今日の招待主はミネアさんと同い年で、学院時代からの友人らしい。
そして、彼女の息子がセリアーナと同い年で今年度学院に通っており、この度婚約したらしい。
その事について2人があれこれお喋りをしつつ、俺は【ミラの祝福】を施していた。
ほぼ丸1日と時間に余裕があったので、間に昼寝とおやつを挟んで両腕と頭部の2ヵ所。
合計2時間行った。
別に太ったりやつれたりしていたわけでは無かったが、受ける印象は大分変わると思う。
近いうちに婚約相手の家と会うそうだが、充分だろう。
「いえいえ。学院のお話を聞けて楽しかったです」
貴族学院は卒業と称していても、卒業式があるわけでは無い。
卒業証書授与や帽子を投げたり等イベントも無し。
平民の学校は卒業式や成績優秀者の表彰等があるらしいが、そういったものは行わないらしい。
したがって、卒業パーティーでの突発的なロマンス等も勿論無し。
まぁ、外国人もいるけれど、通うのは皆貴族だからね……。
ドラマチックではあるけれど、そんな無謀な事はそうそうやらないか。
その代わり、学院生活で交流を深め最終的に婚約をするって事はそれなりにあるらしい。
学院が終了する前後から【ミラの祝福】の依頼が増えていたけれど、卒業に合わせて王都で家同士の挨拶を済ませるから、それに備えての事だったんだろう。
そう考えると貴族学院ってのはあまり行事というか、面白いものは無さそうな所だ。
食事は……美味しかったかな?
それ位か。
「そう?もしその気があるのならセラさんも従者として通う事も出来るわよ?」
「ぬ?」
どういうことだ?
◇
「って事があったんだよね?」
夜の報告会。
基本的に俺は隠し事はしない。
何かあったら言う。
知らない事は聞く。
わからないことも聞く。
報連相は大事だ。
「お母様が?」
考え込むセリアーナ。
ただそこまで深刻な気配は無い。
「そうね……。わからなくもないわ」
「どゆこと?」
引き抜きとかそういう感じじゃ無いんだろうか?
「お前がルトルの孤児院から脱走したことを知っているのは、私達と処理をしたお父様と騎士団長の5人ね。お母様もだけれど、それ以外の者は領都の孤児だと聞いているの」
「うん」
思った以上に少なかった……。
「私の専属とは言え、領主夫人としては自分の手の届く範囲にいる子供にはあまり危険な場へ行かせたくないのでしょう。引き抜きというよりはもう少し成長を待ってから、ってところね」
「……危険なの?」
俺どっちかって言うと王都の方が危ない目に遭っているぞ?
「開拓は危ないものよ。お前がどれくらい戦えるかも知らないでしょうしね」
なるほど……。
じーさんは少しは知っているけれど、親父さん達は離れていたし、わざわざ知らせる事でもない。
「それに、お前なら【ミラの祝福】もあるし、学院で作法を学べば貴族相手に商売ができるようになるわ。私の下にいるままでも、冒険者以外の道を選べるようにもなるわね。選びたい?」
「選びたくない……」
分かり切ったことを。
1時間ダンジョンに潜り偶に屋敷の手伝いをし、後はゴロゴロっていうお気楽生活は手放せない。
「そうね。お前が面倒な作法を嫌っている事を私は知っているわ。ダンジョンの探索を嫌っていないこともね」
配置転換というかキャリアアップというか……そう言う事だったんだな。
「今なら伯爵家長女にその母親である伯爵夫人として意見できるけれど、領地に戻ったら私の立場も変わるし難しくなるから、このタイミングを選んだんでしょうね。私の方から無用な心配だと伝えておくわ」
「揉めないようにね?」
「問題無いわ」
フッと笑っている。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・29枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚