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屋敷への帰宅ルートは、普通に外からでもよかったが、俺は騎士団本部の地下通路を使うことにした。
途中にあるフィオーラの研究室を、挨拶くらいしておこうかなと、通りすがりざまに探ってみたんだが、フィオーラもジグハルトもどこかへ出かけているのか研究室の中にはいなかった。
まぁ、そんなこともあるか……と、俺はそのまま屋敷に戻ることにした。
途中で通路のあちらこちらを眺めてみたが、俺が王都に向かう前と変化は無し。
流石に一月程度だと地下通路に手を加えるようなことは出来ないか。
ってことで、途中すれ違う職員や兵たちに挨拶をしつつも、足を止めること無くそのまま進むと地下訓練所に出た。
今日はここは誰も利用していないらしい。
無人の地下訓練所を通り抜けて、階段を上り屋敷へと入った。
◇
「……はて?」
地下からだと気付かなかったが、屋敷の中に何やらバタバタと忙しそうな気配が漂っている。
加えて普段の屋敷では感じないような気配もそこかしこに……。
お客さんにしてはちょっと数が多いし、どうかしたのかな……とキョロキョロしていると、廊下の先に使用人の姿があった。
丁度いいな。
「ねぇねぇ」
「っ!? これはセラ様。お帰りなさいませ」
「うん、ただいまー。屋敷の中が何か忙しそうだけれど、どうかしたの?」
いきなり現れた俺に驚く北館の使用人だが、それでもすぐに挨拶をしてくる。
その彼女に適当に返事をしつつ、何かあったのかを訊ねた。
「ええ。ルバン様が今日お帰りだということを聞きつけた者たちが先程から挨拶に訪れておりまして……。旦那様の報告会も夜に開かれるのですが、そちらに出席する者たちもそのために通常より早い時間からやって来ているのです」
「……あぁ、今日帰るもんね。んで、その両方が重なっちゃってるからバタついてるんだね」
どうやら正解らしく、俺の言葉に頷いている。
「セリア様たちは南館から動いていない?」
「はい。奥様方は今回の出席は見送ると伺っております。フィオーラ様も先程お越しになって、奥様のお部屋に向かわれましたよ」
「あ、そうなんだ」
まぁ……面倒だもんな……って言葉が喉元まで出たが、それを何とか堪えた。
ここで働く連中って、何気に街の有力者の関係者だったりするもんな。
迂闊なことは喋れない。
「とりあえず、屋敷全体がバタバタしてる理由はわかったよ。オレの姿が見られるのはちょっと面倒になるかもしれないね……。お客さんがいるのってどこかわかる?」
セリアーナだけじゃなくて、俺も一応この街屈指の有力者だったりするし、彼等からしたら挨拶しておきたい存在だろう。
見つかってから挨拶を無視して逃げるってのはちょっと印象が悪すぎるし、そうなる前にさっさと部屋に戻った方がいいだろう。
ただ、どう向こうの部屋に近づくか……だな。
「はい。北館の応接室と、2階の客室に通しています。中庭の南館側からなら2階に上がられても目につかないと思いますが……」
「うん。ありがとう。窓お願いね」
ココから出てすぐ上に上がったんじゃ、2階の部屋に通された連中が気付くだろうし、中庭から壁沿いに大回りで行くのが正解か。
俺は中庭に出た後の窓の施錠を頼むと、中庭に出てコソコソと移動を開始した。
◇
中庭を壁沿いに回っていき、北館の俺の部屋の真下にまで辿り着いた。
ここまで来たらもう客の目を気にする必要もない。
真上を見ると、俺の帰還に気付いたセリアーナが窓を開けているし、一息に行くか。
【浮き玉】を一気に上昇させて、開いた窓に飛び込んだ。
「ふぅ……ただいま」
一息つくと、窓の前で待機していたテレサに挨拶をする。
「はい。お帰りなさいませ。珍しいルートを使われましたが、使用人にでも聞かれましたか?」
「うん。ルーさんが帰還する前に挨拶したいってお客さんが多いってね。旦那様の報告会のお客さんもついでに早く来ているそうだし、向こうは忙しそうだったよ。フィオさんもこっちに来てるんだって?」
「はい。奥様もですが、彼女も今日はこちらで過ごすそうです。私とエレナは夜に一度向こうへ行きますが、すぐに戻ってくる予定です」
俺はテレサの説明に、「ほぅほぅ」と頷きながらドアへと向かった。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




