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フィオーラがいた辺り一面に立ち込める霧。
彼女がドカドカ魔法を撃ちまくった結果だ。
火球と水球が同じ的に当たり、蒸発することで水蒸気が発生し、それを風で散らす。
10分間程度だが、それを何度も繰り返した結果がこれだ。
聞こえてくる炸裂音や間隔に変わりがない事から、もうアイテムの検証とかそんなのじゃ無く、楽しくなってんじゃないか?
アレクの雄叫びに始まりずっと大きい音を立てているし、入口に立つ兵がチラチラこちらを見ている。
「ちょっと……ジグさん?」
「ああ。止めてくる」
皆まで言わずとも察したのか、苦笑を浮かべながら霧の向こうへ消えていった……。
これだけ言うとカッコいいんだけど……、おっさん、おばさんが、玩具にはしゃぎまくっていただけだからな!
程なくして音が止んだかと思うと、強い風が吹き霧が散らされていった。
視界の先にはクレーターだらけの訓練場と、それを直している2人の姿がある。
「そういえば、大分大きい音立てていたけど大丈夫だったのかな?」
地面を均している2人を眺めながら、ふと湧いた疑問を口にした。
「この季節は何処も窓を閉めているし防音もしっかりしている。問題無いだろう。お前への魔法の指導って口実で来たんだし、魔法を使う事はそこの連中も把握できているからな」
騎士団本部を指さしながらアレクが答える。
なるほど、そりゃ安心だ。
「終わったみたいだな」
アレクが言うように、2人がこちらに向かって来ている。
フィオーラはもう【竜の肺】を外している様で、元の姿だ。
「ちょっとやり過ぎたわね。悪かったわ」
自覚はあるらしい。
「それで、屋敷に戻るのかしら?お嬢さんに出す報告書をまとめたいのだけれど」
「そうですね、他に用が無いのなら戻りましょう。昼から予定はありませんし、ついでに報告もしましょう。それでいいですか?」
「ええ、構わないわ」
「オレもー」
「俺もだ」
アイテム検証はこれでお開きとなり、帰還する事となった。
ジグハルトとフィオーラも屋敷に来るって事は、【隠れ家】を使う事は出来ないか。
シャワー浴びたかったな……。
◇
【竜の肺】の効果。
大規模魔法の発動の補助というのは間違いではないが、より正確には、周囲の魔素と自身の魔力を混合し、吸収する。
その2つの過程の補助をするらしい。
魔法の威力が上がったり、使う事の出来ない者が使える様になったりはしないそうだ。
ただ、本来いくつもの過程を経る大規模魔法で、2つ無視できるのは使い手に余力を生む事になる。
その事から、発動できるかギリギリの者は【竜の肺】を使えば、大規模魔法を扱えるようになるんじゃないか、というのがジグハルトとフィオーラの考えだ。
……刺青、ある意味惜しかった気がする。
「貴方達には効果はあったの?元々なくても使えるんでしょう?」
「ソレの効果で威力が上がることは無いが、余力を速度や精度、威力に割り振れるからな。今まで3発しか撃てなかったのが5発撃てるようになりゃ影響は大きいだろう?それに、俺にもまだまだ無駄があったことが分かった。後数回試せばコツが掴めるはずだ。もうすぐしたら領地に戻るんだよな?そっちで試させてもらうぜ」
「そうね。足を止めて動かない的に向かって撃つより、実戦で試す方が得られるものが多いはずよ」
フィオーラも乗り気らしい。
「そう……ならよかったわ。【竜の肺】は普段セラに持たせておくから必要な時は言って頂戴」
聞いたセリアーナは、なんでそこまで?と思っているのかもしれない。
少し言葉にキレが無い。
まぁ、それはそれとしてだ。
俺は横で報告を一緒に聞いていて気になることが一つある。
「ね、ジグさん」
「あ?」
「話を聞いていると、威力には【竜の肺】は関係無いみたいなんだけど……」
「ああ。まあ無くても威力は出せるが、ある方が手軽に出来たな」
「……最後の一発も出来るの?」
「最後……?ああ、あの抜いたやつか。出来はするが、あそこまで収束するなら5秒位はかかるな」
「ふ……ふーん……」
そっかぁ……5秒あればアレ撃てるのか……。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・29枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚