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ズドドドドドドっと魔法の着弾音が響き渡る。
これは大規模魔法じゃなくて、普通の魔法のはずだ。
それでも訓練場にクレータの様な跡が出来てきているのが恐ろしい。
「これは何しているの?」
「基礎魔法で威力の向上具合を試しているの。杖を新調した時によくやるわね」
埃を吸わない様にだろうか?
扇で口元を隠しながらフィオーラが説明してくれる。
試し打ちか。
基礎魔法であの威力って事は、大規模魔法以外にも効果があるんだろう。
「見たところ威力も連射速度も変化が無いわね」
……効果は無かったらしい。
唖然としていると、魔法の連射を止めたジグハルトが近づいて来た。
「フィオ、硬いやつを頼む」
「ええ」
それだけ言うとまた離れていった。
わざわざ指定するって事は今度こそ大規模魔法か。
念の為アレクの後ろに隠れていると、その間にフィオーラが高さ2メートル程の壁を、離れた所に作り出していた。
厚さはわからないが、硬いやつって言われて出した位だし、以前俺が砕いた的よりは硬いはずだ。
「っ‼」
その硬いはずの壁が一瞬で砕け散った。
それ以前にいつ魔法を撃ったのかすら気づけなかった。
「……アレクはわかった?」
「いや……気を抜いたわけじゃ無いんだが……速すぎる。外での戦闘で何度も魔法を撃つところを見たが、あそこまで速くはなかった」
だよな?
更にフィオーラが複数の壁を出すが、どれも一瞬で砕けていった。
「ん?」
フィオーラが複数の壁を出し、ジグハルトが一瞬で砕く。
それを何度か繰り返したと思ったら、今度は一際巨大な壁を一つだけ出した。
どうするんだろうと見ていると、強烈な光が突如放たれた。
「くっ⁉」
「んぎゃっ⁉」
俺とアレク仲良く声を上げる。
そして間髪入れず、雷が落ちたような音。
そういえばこのおっさん「閃光」だったな……。
「ああ……クソっ、油断した。セラ、大丈夫か?」
「あのおっさん急に光りおって……!」
モロに見てしまったが、以前のダンジョンの時と違いすぐに視力は戻った。
加減でもしたんだろうか?
とりあえずどうなったか確認しようと壁の方を見たのだが……。
「どうよ……あれ」
「……すげぇな」
何というか言葉が出ない。
「分厚い物を貫通するってのは、割ったり砕いたりするより難しいはずなんだがな……」
貫通したおかげでわかったのだが、巨大な壁と思ったのは1辺3メートル程の立方体で、20センチ程の穴が綺麗に反対側にまで貫いている。
その魔法を撃ったジグハルトはフィオーラと何やら言葉を交わし、【竜の肺】を渡している。
ジグハルトの番は終わったらしい。
片手をあげ、こちらに近づいてくる。
「おう、悪かったな。目は大丈夫か?」
先程の閃光の事だろうか?
「ええ、気を抜いたつもりは無かったんですが……やられましたよ」
はははっと笑いながら答えるアレク。
俺の代わりにガツンと言ってくれていいのに……!
「【竜の肺】はどうだった?」
「あー……凄いな。まあ、外では話さない方がいいか。お嬢さんは学院は昼までだろう?屋敷で話そうぜ。今はフィオの魔法だ」
やっぱ凄かったのか……。
どう凄いのかも気になるけれど、ひと気が無いとはいえ確かに外で話す事じゃ無いな。
フィオーラの魔法は見るの初めてだし、そっちに集中しよう。
その前に……。
「フィオーラさんも光ったりする?」
大事な事だ。
「いや、あいつは光らねーよ。そのかわり、あの扇が見えるか?【月の扇】って名前の恩恵品で、魔力の消費はデカいが、火、水、風って要領で複数の属性を同時に扱えるらしい。派手だぞ」
フィオーラがいつの間にか持っていた扇。
アレはアイテムなのか。
話を終えフィオーラの方へ向き直ると、火球やら水球やら何かの球やらを自分の周囲に浮かせていた。
確かに派手そうだ……。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・29枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚