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「セラ」
「うん?」
2人に王都を発ってからの詳しい情報を話していたセリアーナが、ふと話を中断してドアを指した。
誰が来たのかはわからないが、まぁ……誰かが来たんだろう。
「あぁ……はいはい、了解」
俺は出迎えるために【浮き玉】に乗ると、そちらに向かって飛んで行く。
そして、ノックが鳴る前にドアを開けて廊下を覗き込んだ。
「誰ー? って、あらま」
ドアの前にいたのはフィオーラで、丁度ノックしようとしていたのか、胸の高さに握った手があった。
ノックする前にドアが開けられて、少しは驚いたりしたのかな……と思いきや。
「久しぶりね。呼ばれたのだけれど、入っても?」
中にセリアーナがいるのがわかっているなら、事前に察知されていることも予測出来るか。
全く驚く素振りを見せずに、俺の返事を待たずに部屋の中に入ってきた。
呼ばれたか。
セリアーナにかな?
「んー……フィオさんだけ? ジグさんはいないのかな?」
「ジグはアレクたちと下の本部にいるわ。ルバンも来ていたし、いつものように情報交換をしているんじゃないかしら?」
「……いつもなんだね。前は来たりしてなかったけど……」
思わぬルバンの情報にちょっと驚いてしまった。
領都と彼が治める村は、馬を飛ばせば数時間で行き来出来る、日帰りが十分可能な距離だ。
やろうと思えば可能な距離だが、以前からはもちろん、彼等が領地に戻って来てからもそんなことはしていなかったんだが……俺たちがいない間のフォローかな?
「ええ。貴女たちが領地を発って以来、領内の状況を確認するために、時折街を訪れては本部に籠っていたりしていたわ。……久しぶりね奥様」
言わずとも俺が聞きたいことがわかっているのか、フィオーラは必要なことをポンポンと答えながら席に向かうと、セリアーナの向かいに座った。
「ご苦労様。呼び立てて悪かったわね」
「どうせ夜に集まるんでしょう? ちょうど仕事も切りのいいところまで片付いたところだったし、問題無いわ」
席に座ったフィオーラはセリアーナにそう返すと、後ろを振り向き俺を見た。
そして、指でチョイチョイと……。
「はいはい」
俺はそう呟きながら、フィオーラの膝の上に移動すると、【祈り】と【ミラの祝福】を発動した。
何だかんだで俺もバタバタしていたし、このポジションも久しぶりな気がする。
ようやく帰って来たって実感がわいて来たな。
何となくホッとしつつ、俺は4人の話を聞きながら施療に集中することにした。
◇
さて、セリアーナは俺たちが領都に到着したところまで含めて、フィオーラも交えて改めて一通り話すと、一先ずここまででいいと話を終わらせた。
ミネアさんの時もそうだったが、続きは夜だな。
ってことで、話のバトンはセリアーナからフィオーラに移った。
彼女が俺たちが領地にいない間に任されていた役割は、いつもの彼女の仕事に加えてテレサのサポートなんだが、そちらの方は問題無く処理出来ていたらしい。
「特に変わった出来事も無かったし、各ギルドも私の研究所も問題無く動いているわ。それと、昨年処理した孤児院跡の件だけれど、素材の調達や加工の手配は完了したし、夏の終わりか秋頃には完成出来そうよ」
「あら? それは何よりね」
孤児院の跡地に建てる予定の慰霊碑。
なんか手間がかかるようなことを言っていたが、完成の目処は立ったのか。
まだ着手はしていないようだが、数ヶ月もかからないようだし、多少なりとも関係している身としてはありがたいことだ。
「折角広い土地を使えるのだし、少し設置個所とその周辺を弄らせてもらっているけれど……構わないわよね?」
「弄る?」
フィオーラの言葉に、セリアーナは怪訝な表情を浮かべながら答えている。
街中に設置する物だし、変な物を仕掛けるとは思わないけれど……テレサたちを見ても、何をするのか知らないようで2人で顔を見合わせたりしていて、何をするのかはわからない。
だが、セリアーナは任せている以上深堀りするつもりはないようだ。
「まあ……妙な物を作るわけじゃないのなら構わないけれど……」
「大丈夫よ。危険なものは作らないから安心して頂戴。それよりも……この娘の足は治さないの? 怪我をしているのよね?」
「それはね……」
慰霊碑の話はもう終わりらしく、セリアーナは、テレサたちにも話していた俺の足の治療方針についての話を、フィオーラにも行っていた。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




