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リーゼルの視線を追いかけると、あの舟が西に向かって進んでいるのが見えている。
あの受け止めるのに使った布を被っているから、どんな姿なのかはわからないが……ヘビたちの目で4人組なのがわかった。
もう間もなく俺たちの前を通過するだろう。
「あの小ささじゃ遠くまでは無理だろうし、適当なところで乗り捨てて、そのまま陸路で離れるつもりなんだろうね。流石に陸から追いかけるのは難しいだろうし、中々よく準備しているよ」
呆れつつも感心したように言うリーゼル。
「これだけ陸地から距離があると、余程強力な魔法でもなければ沈めることは難しいし、火系統なら別でしょうけれど、周りは海だし、あの布で受けてしまえばすぐに消火出来るものね」
同じくセリアーナも。
「余程強力な魔法ね……」
そして、2人の声を聞きながら呟く俺。
とりあえず、何をしたらいいのかはわかった。
ついでに、あんまりのんびりもしていられないこともだ。
「よいしょっ!」
俺は【ダンレムの糸】を発動して甲板の上にドンっと置くと、倒れないように尻尾で支えた。
【浮き玉】の操作はセリアーナに任せているが、何も言わなくても上手いこと合わせて来るあたり、コレで間違いは無さそうだな。
「アレを撃てばいいんだね?」
「……そう頼みたかったんだが、足は大丈夫かい? 難しいようなら僕が撃つけれど……」
俺の撃ち方を思い出しているのか、リーゼルは困り顔だ。
俺の撃ち方は両足を使うし、そう考えるのも無理はないが。
「旦那様使ったこと無いでしょ? それならオレがやった方がいいよ……多分」
距離はこの船から300メートルも離れていないところを通るだろうし、あの舟はほぼ一定の速度だ。
当てるだけなら、障害物も無いし真っ直ぐ撃つだけでいいから、初めてでもそこまで難しくは無いと思うが、いかんせん一度外すと次に撃てるまで時間がかかってしまう。
それなら足は痛いが、俺が撃った方が確実だ。
まぁ、でも。
「念のため弓の方を支えてくれると嬉しいかも」
「支える……? ああ……任せてくれ。そろそろ正面に来るね。撃つかい?」
リーゼルは俺の言葉に「?」といった表情を浮かべたが、すぐに理解して弓に手を当てた。
「うん。セリア様、ちょっと右側に回ってもらっていいかな?」
「ええ」
普段は左足で弓を支えて右足で矢を引いていたが、今回は左足で引くことになる。
いつもとは逆だし、一応気を付けておかないとな……。
「さてと……それじゃーササっとやりますかね……!」
反対側に回り込み、【緋蜂の針】に加えて補助用の尻尾と腕も発動して、準備は完了だ。
◇
「セラ君、もう正面に現れるよ」
後ろの弦から目が離せない俺に代わって、リーゼルが正面の様子を伝えてくれた。
「うん、了解です。この距離なら一瞬だろうから、舟の先端が矢の先に入ったら教えてください」
弦を左足で押さえながらチラっと振り向くと、リーゼルだけじゃなくて、セリアーナも矢の上部を押さえてくれている。
俺の尻尾と腕に、さらに抑える箇所が2ヵ所も加われば普段より安定するかもしれないが……。
「それと、2人とも矢を撃つときは余波に気を付けてね?」
「もちろんだよ。流石にこれには巻き込まれたくないからね……セラ君、そろそろだ」
「了解!」
リーゼルの言葉で、さらにグイっと足を押し込むと、バチバチとした矢の音が一層大きくなっていく。
威力は十分だ。
いつでも撃てるな。
後は合図を待つだけだ。
「来たよ。正面だ」
リーゼルの言葉に「よし」と頷き正面に向き直ると、射線上に丁度賊の舟が乗ったタイミングだった。
小さく息を吐いて、しっかりと狙いをつけて……。
「…………ほっ!」
矢を放った。
ドンっ! と、大きな音を響かせながら、一直線に前を行く舟目がけて飛んで行く光の矢。
「くっ!? うぉぉっ!!?」
間近でそれを見たリーゼルが、珍しく悲鳴のような声を上げている。
だが、一先ずそれは置いておいて、矢が飛んで行った先に目をやると、バカでかい音と共に木片交じりの水柱が吹き上がっていた。
命中したか。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




