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「ほっ」
宙に浮いた状態のアイテムを、落下する前にキャッチした。
20センチ程の長さで、灰色に近い白の円錐が湾曲した形状。
何かの角の様だ。
まぁ、角笛っていう位だしね……。
「それは何なの?」
「【猛き角笛】だって。知ってる?」
開放していない状態だとまんま角笛だ。
どう考えても音波兵器じゃ無いな……。
「……声に士気向上や、混乱を鎮める効果を与える恩恵品だ。西部のいくつかの国の貴族や傭兵団で所持している者がいた」
「へー……アレクは知ってた?」
フラフラしつつも知っているのかジグハルトが【猛き角笛】の説明をする。
西部出身で、あっちで傭兵をしていたことのあるアレクはどうだろう?
「噂だけなら聞いたことあったな。どんな戦況でも規律を保つ隊があるって。この国でも王都の騎士団と、どこかの男爵家が1つずつ持っていたはずだ」
「ほう」
【祈り】の様に強化はしないけれど、どんな状況でも実力は発揮できる様になるのかな?
……テストの時とかにあると便利だろうな。
さて……それはともかくどうしたものか。
チラっとジグハルトの方を見るが、ダメそうだなこれは。
壁にもたれながらとはいえ、自分の足で立ってこそいるものの、顔がひどい。
昔酒場を手伝っている時に見た、仲間を死なせた連中や、有り金全部すった連中と同じような顔をしている。
まぁなー……どれだけ年月をかけたのかは知らないけど、その結果がアレだもんな。
アレこと魔糸は、フィオーラが手にしている。
使い道はあるだろうが、ジグハルトにとっては必要ないだろう。
一般市民はもちろん、冒険者でも聖貨を換金に出す者も多いそうだが、今の彼を見てしまうと無理も無いように思える。
「ゴブリンにケツを刺される」という心に深いダメージを負った時に使う下寄りのスラングがあるが、今の彼には相応しいかも知れない。
とは言え、この空気!
どーすんだ?
「セラ」
「ん?」
重いんだか気まずいんだか微妙な空気を破るセリアーナの声。
「確か持っていた聖貨は19枚だったわね。今使ったから残りは9枚。そうね?」
「うん」
返事を聞くなりセリアーナは寝室に向かい、そしてすぐに戻ってきたと思ったら、聖貨を1枚渡してきた。
「これを使っていいから、もう一度やりなさい」
「……俺でいいの?」
どうせやるんなら自分でやっちゃえばいいのに。
「私は10枚捨てるのは嫌よ」
確かに。
別にセリアーナは自身を強化する必要は無いんだし、ガチャをしなくてもいい。
ただ、ジグハルトが思った以上に凹んでいるからな……。
今後のモチベーションとかを考えると、どうにかしておきたいんだろう。
かと言って、ジグハルトに10枚渡してまた外れだったり、全く合わないのが出て来ても困るから、1枚で済む俺にやらせようって事か。
なんかもう疲れて来たし、さっさと済ませよう。
「ほいっ!」
聖像に捧げ、聖貨が消える。
「たっ!」
間髪入れずにストップ。
「おや?」
頭に浮かんだ文字は【竜の肺】だ。
何か凄そうなんだけど……火でも吹くの?
ジグハルトには残念だけど、遂に俺にも遠距離手段が?
と思ったのだが、違ったらしい。
スキルではなく、またしてもアイテムだ。
「お?」
目の前に光る輪っかの様な物が現れた。
2連続か……絶好調だな!
落下する前に受け止め、広げてみる。
銀色の鎖に、中央に来る位置に楕円の飾りがある。
大きな口を開き、舌と牙が見えるから竜を模しているのかもしれない。
「ペンダント?」
「何だったの?」
「【竜の肺】だって。火でも吹けるように」
「【竜の肺】だと⁉」
アイテムの名前を聞くなり、壁にもたれ死んだような顔をしていたジグハルトが大声を上げ近寄って来た。
「ぉ……ぉぅ」
「見せて頂戴!」
同じくジグハルトの隣にいたフィオーラもだ。
2人とも目を見開き似た様な表情をしているが、これが何か知っているんだろうか?
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【猛き角笛】【竜の肺】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・29枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】・5枚