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セリアーナの、騒動が終わったのにまだ戻っていないという指摘に、リーゼルは頷くと言葉を続けた。
「セリアが言うようにまだ戻って来ていないね。港側が戻らせていないそうだ。とはいっても、別に何か問題があるからとかでは無いよ」
「あら? そうなの?」
「ああ。今は夜だ。たとえ照明を用意しても、視界が悪いことに違いはないからね。一斉に戻らせると、事故が起きた時が大変だろう? だから、少数ずつ徐々に戻らせるらしい。今はそのための準備をしているんだ」
「言われてみればもっともなことね。海程では無いけれど、川の事故も大変ですもの。……それで? 完了するまで出港を遅らせるのかしら? どれくらい時間がかかるのかわからないけれど、それは流石に遅くなり過ぎるんじゃなくて?」
そう言うと「ねえ」と同意を求めるように、セリアーナは俺を見た。
「そうだよねー。船がどれだけあるのかはわからないけど、この船だってすぐに動けるようになるわけじゃないしね? それならもう、出港は明日に回した方がいいんじゃない……?」
ただでさえ、今はもう結構遅い時間だ。
そこからさらに待つとなると……出港するのは何時になるのやら。
セリアーナに促されたから、適当に思いついた事を喋ってみたが、確かに出港を明日に回すのだって悪くは無いと思うんだ。
俺たちが警戒していたこの街に潜んでいる賊も、組織立って動くような連中は流石にもう打ち止めだろうしな。
まぁ……泊まるとしたら代官の屋敷になるだろうが、今はあそこはボロボロになっているが、その分逆に警備がしっかりしているだろうし、安全なはずだが……。
どうだろう……とリーゼルを見ると、彼は苦笑しながら首を振っている。
「安全が確保出来ていて時間が余っているのならそれも悪くはないんだけどね」
「……時間無いんですっけ?」
安全は断言は出来ないけれど、時間はそんなに切羽詰まっていたっけ?
「本来僕らは船団を組んでリアーナを目指す予定だったんだ。街への到着が遅くなることは前から想定していたから、そのために出港予定の船に、時間の調整をしてもらっていたんだが……流石に遅れ過ぎたからね。既に出港しているんだ」
「代官の屋敷と港での襲撃が余計だったわね。でも、今日の出港にこだわる理由はわかったわ」
そう言って、セリアーナは頷いている。
ついでに隣で俺も。
適当な船の集まりである船団は、基本的にお貴族様の船が真ん中に入ることで、何となく指揮系統が完成するんだ。
その貴族の船がいないんじゃ、ちょっと困るよな。
リーゼルにしても、俺たちが予定をさらに遅らせることで、合流が出来ずに、他の船に何か被害が出てしまうような事態は避けたいんだろう。
「わかってもらえたなら良かったよ。それじゃあ……ここからがある意味本題なんだ。セリア」
「何かしら?」
「あの資料の中に君と関係のある船はあったかな?」
「直接関係は無いけれど、実家が利用している商会の名前はあったわね……。それがどうかしたの?」
「この船はもう出港するけれど、それと合わせて退避中の船も戻すことになっているんだ。ただ、その際に何か事故が起きて転覆したりしても、僕たちは救助に向かわないことになっている」
「そう……まあ、時間もかけられないし仕方ないわね」
「そうだね。ただ、この船の近くで事故が起きた際に、その船が僕たちと関係のある船だった場合は、船を止めて救助を特別に行うつもりだからね。後で船長に渡すから、関係のある商会を紙に書き出しておいてくれるかい?」
「ええ。他に話す事が無ければ、今この場で済ませるわ」
「ああ、頼むよ」
どうやら話はこれで終わりらしく、リーゼルは使用人を呼ぶと、部屋に備え付けられた机から紙とペンを持って来させた。
セリアーナはそれを受け取ると、サラサラとペンを走らせて一気に書き上げている。
チラッと覗き見ると、商会らしき名前とその関係性が書かれていた。
あまり詳しくないからってのもあるが、俺は聞いたことも無い名前だ。
セリアーナが資料を見ていたのは数分程度のはずだったけれど……よく覚えているよな。
そう感心しながら、セリアーナの動く手を眺めていた。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




