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船員に使用人、護衛の冒険者たち皆が部屋を出て行き、部屋には俺とセリアーナ2人になった。
「それじゃー……部屋の中調べよっかね……」
そう呟くと、俺は足元に転がしていた【浮き玉】に乗って、浮き上がった。
護衛の彼女たちの申し出を断ったのは、俺に調査をやらせるためだろう。
……いや、それだけじゃないか。
「ええ。私も一緒に見るわ」
セリアーナも自分で確認したかったからだろうな。
彼女も【小玉】に乗って浮き上がると、ドアの前に向かうオレの後ろをついて来ている。
それじゃー壁から始めるとして……ついでに、折を見て、馬車や外でだと聞きにくかったことも聞いておこうかね。
◇
「こっち側は何もないね」
一先ずここから……と始めた、ドア側の壁には何の異常も無かった。
まぁ、その壁の反対側は通路だし、何も無いのは当然か。
「それは結構ね。それなら次はそちらにしましょう」
「ほいほい」
セリアーナの指示に従って、壁を伝って奥へと移動する。
こちら側の壁の向こう側は、行きと一緒だったら倉庫みたいな小部屋になっているはずだ。
何かを仕込むには適しているが、今のところ何も見つからない。
「何も無さそうかな?」
「この船も警備は常駐していたでしょうし、忍び込んで何かを仕込むような真似は難しいでしょうね。お前が必要無いと思えばしなくてもいいわよ?」
ここに何かを仕込めるような者はそう簡単には見つからないだろうし、そもそもそんな腕があれば、そんな汚れ仕事をやる必要なんかないんだよな。
ついでに、余程のことがあっても【隠れ家】と【浮き玉】がある以上切り抜けられるんだ。
だから、多分今やっているのはただの杞憂に終わるんだろうが、スッキリした気分でリアーナまでの船路をダラダラしたいし……。
「……いや、全部調べたい」
これはもう癖だよな。
「そう。まあ、調べること自体は悪いことでは無いし、付き合うわ」
少し呆れた様なセリアーナの声。
どんな顔をしているのか、振り向かなくてもわかるな……。
「うん。……そう言えばさ、もし何かあるとしたら、どんな物が仕掛けられてると思う?」
「仕掛けられている物?」
「そうそう」
別にどんな物であろうと、魔素を使う以上はヘビたちの目が捉えるだろうし、わざわざ教えてもらわなくてもいいんだが……まぁ、ただ壁をじーっと凝視し続けるだけってのもなんだしな。
部屋の壁や天井、床下を調べる作業はもう何度もやっていて、お喋りしながらでも出来るくらいには慣れているし問題無い。
話題に関しては、別に護衛のことを聞いてもいいが、この部屋は広いし、いきなりじゃなくてもう少し後に回してもいいだろう。
「そうね……。例えば私が知っている物の中では、室内の人間の魔力を一定以上吸収したら発火する魔道具……なんて物があるわね。室内には魔道具がいくつか設置されているでしょう? それを起動する際に少量ずつ奪って行けば、数日もあれば起動出来るはずよ」
「ほぅ? 海の上で火事になったら危険だね……」
魔道具を発動する魔力なんてたかが知れているし、ちょっと他の物に回す分を持って行かれても気付けないかもしれない。
中々危険な代物じゃないか。
セリアーナも俺の言葉に頷いている。
「こういった客室なら利用者は大抵室内にいるし、巻き込める確率も高いわね。もっとも、本体は隣室や壁裏に隠せても、室内全体に仕掛けを施す必要があるし、簡単では無いわ」
「あぁ……回路を部屋の魔道具に繋げておく必要があるんだね。それは難しそうだ……」
「そうね。もっと簡単な物だと、回路なんかを使わずに、そこらに漂う魔素を吸収することで発動する物もあるわ。ただし、直接近くに置いておく必要があるそうね。火だけじゃなくて毒だったりと色々種類はあるけれど、その分簡単に見つかってしまうから、もっと人の出入りが多い場所でも無ければ簡単に見つかるでしょうね」
「ほぅほぅ……んじゃ、あるとしたら前者か」
「両方の可能性もあるわね。どちらかを見つけたら、気が緩むかもしれないでしょう」
「ぬ……それもそっか」
「気を付けて頂戴」
「はーい……よし、こっち側は何も無いね」
等と話している間に、こちらの壁の調査は完了だ。
お喋りしながらでも見落としは無し。
完璧だ。
「結構。それなら次は向こうね」
そう言うと、セリアーナは隣の壁へと向かって行った。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




