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「来るぞ! やれっ!」
前衛の男は、俺が突っ込んでくるのを見て、もう1人にそう指示を出した。
「おう!」
そして、その声を聞きすぐに動き出したもう1人。
バっと横に跳ぶと、すぐに魔道具を足元に投げつけてきた。
「あれっ!?」
てっきり2人で揃って俺を迎え撃つんだとばかり思っていたんだが、先手を打って来たか。
これは想定外だと、ついつい驚いて変な声を上げてしまった。
一気に足元を這うように白い靄が広がりだしているが……煙幕かな?
確か向こうの方でも似たような物を見たな。
結局これが何かはわからないが……本人たちの元にも広がっているし、そこまで気を付けるような代物じゃないはずだ。
「むっ」
それよりも……足元から視線を賊たちに戻すと、さらに続けて何かを投げようとしている。
この流れだと……風系統の何かか?
下手に先に動くと、動いた先を狙われるかもしれないし、ギリギリまで待たないと。
そう考えて、投げつけて来てから回避に動こうと、俺は賊の挙動に集中していたんだが……。
「…………んん!?」
男は確かに魔道具を投げはしたんだが、その投げた先が俺ではなくて、足元を這っている白い靄の真ん中だった。
その魔道具は読み通り風系統だったようで、一気に靄が舞い上がって柱のようになっているが……俺の【風の衣】には特に影響はないし、舞い上がったといっても精々薄い霧程度で、視界に影響があるほどではない。
この状況でやるってことは、きっと何かの意味があるんだろうが……でも一体何が目的なんだろう。
この行為の意味を考えながら、賊への攻撃を中断して白い柱を見上げていたのだが、何かが動くのが視界の隅に移り、ハタと我に返った。
いかんいかん。
一瞬とは言え、完全によそ見をしてしまっていた。
魔法の用意もしていたし、まだそれが来るかもしれない。
気を抜いちゃ……。
「おおおっ!?」
飛んでくるかもしれない魔法に備えようとした正にその瞬間、賊の1人が魔法を放って来た。
タイミングが良すぎて、ついつい叫んでしまったが、その魔法は俺を狙ったものでは無くて、白い柱の根元を狙ったようだ。
そして、その魔法は今までのように風系統のものではなくて、火系統。
屋根に着弾したかと思うと、大きな破裂音と共に火が屋根に燃え広がった。
んで、その火は白い柱の根元を赤く照らしている。
魔法の火だからか、あるいはあの魔道具が何かに作用しているのかはわからないが、普通の火よりも燃え方の勢いが強い気がする。
だが、今はそんな事よりもだ。
「えぇぇ……これなにしたいの?」
俺を狙うならまだしも、屋根焼いてどうすんだ?
賊の訳の分からない行動に驚くやらパニックになるやら……。
とはいえ、そんな状況でも先程の様なミスを繰り返したりはせずに、その燃えている個所を見つつも、チラチラ賊たちにも視線をやっていた。
そのお陰で、2人の動きに気付くことが出来た。
「よし。行くぞ!」
「ああ」
賊たちは屋根上に転がっている、他の仲間を放って屋根の外へ向かって走り出した。
下の連中と合流するつもりなのか、それとも逃げるつもりなのかはわからないが、とにかくこの屋根上は放棄するつもりだろう。
今すぐ突っ込めば追いつけるかもしれないが……。
こいつら本当に何をしたいんだ?
普通に考えたら、足場を燃やしたら互いに実力を発揮し辛いだろうし、2対1って数の優位を活かせるかもしれないが、俺には関係の無いことだし……かといって、大して意味の無いことにこんなに手の込んだことをするとも思えない。
わからん!
「それより、どっ……どうしよう!?」
この燃えている屋根はどうしよう!?
警備の人間が中に居るだろうが、倉庫は木製だし放置していたら、この火の勢いを考えたら倉庫全体が炎上するよな?
「えーと……えーと……えーと……。とりあえずやるか!」
決して思考を放棄したわけではない。
とりあえず、この火をどうしたらいいかわからないし、リーゼルたちに指示を仰ぎに行くことになるだろう。
どうせ俺も屋根から離れるのなら、あの2人を今の有利な状況でやっておいた方が、後々面倒が無くていいよな?
うむ。
そう決めると、そろそろ屋根の端に辿り着きそうな2人目掛けて、一気に突っ込むことにした。
「……たぁっ!」
「ぐはっ!?」
俺の蹴りを背中に受けた男は、呻き声をあげながら屋根から消えていった。
さぁ、これで残りは1人だ。
一気に片付けるぞ!
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




