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「そろそろ帰って来るみたいだな」
夜も更け食事も済ませついでに俺は風呂も入り、後は寝るだけというところで何やら1階の方がバタバタしている。
先触れでも来たんだろう。
アカメの目をオンにしてから、窓から身を乗り出し城の方へ目をやると、木や壁といった遮蔽物越しにだが、騎馬に先導される集団がゆっくり近づいてきているのがわかった。
「お?」
「どうした?」
行きと人数が違う事に気づき、念の為【妖精の瞳】を発動して、改めて見てみたのだが、妙に強いのが数人いる。
エレナよりちょっと上だろうか?
「強い人が何人かいるよ。騎士団の人かな?」
「だろうな。それと多分親衛隊もいるはずだ。女性の王族に付いているそうだが、お嬢様も同じような扱いなんだろう」
「ほう」
違法取引の現場に行った時について来てくれた女性騎士がそうだったな。
親衛隊って括りらしいが、あの人も強いんだろうか?
「俺達も行こう」
そう言うとアレクはササっと机の上を片付け、立ち上がる。
「はいよ」
軽く服の裾の皴を伸ばしてサンダルを履き、部屋を出るアレクに続いた。
当主もいるし、畏まった場なので【浮き玉】の使用は控えておこう。
500メートル位離れていたし、到着まで4~5分位かな?
やや早足のアレクと並び1階まで行くと、玄関ホールには既に使用人たちが整列していた。
俺達もその端に並ぶが、外で声が聞こえた。
丁度セリアーナ達も屋敷に到着した様だ。
皆頭を下げているので俺達も倣っている。
そうしているとすぐに扉が開き、中に入ってきた。
結構ギリギリだったな。
まずはじーさんの所へ報告に行くらしい。
少し気になるのは、知らない人が1人いる事。
兵は屋敷の中には入ってこないし、この人が親衛隊の人かな?
「アレク、セラ、2人は部屋で待っていなさい」
「はい」
この声の感じは上手くいったみたいだね。
◇
「待たせたわね」
部屋で待つこと30分程。
そろそろ眠気に負けそうになったところでセリアーナとエレナ、それにもう1人鎧をつけた女性が入ってきた。
セリアーナの着ているドレスは行きと同じで白い物だが、胸元に行きには無かった大きい赤い花の飾りをつけていた。
確かプロポーズかなんかでそういうのを贈ると聞いたことがあるが、婚約でもやるのか。
「すぐ終わるから我慢なさい」
俺の様子に気づいたのかそう言ってくる。
「うん」
よし……耐えるぞ。
「私の誕生日の祝いとリーゼルとの婚約の発表と、どちらも問題無く終えたわ。根回しは既に終えていたし、邪魔など入らないのはわかっていたのだけれどね?それと合わせて新領地の件も発表したの。これで、ミュラー家だけでなく王家の支援の下、開拓が進むことが知れ渡ることになるわ」
「ふむふむ」
開拓自体はじーさんの頃から少しずつ進めていたけれど、これで本格的に国家事業って事になるんだな。
それなら成功する見込みは高いだろうし見返りも期待できる。
他所からの支援や参加も増えるはずだ。
「結婚式は再来年の記念祭の3日目に王城で行うことが決まっているわ。それと同時にリーゼルが公爵家を設立し、ルトルから東が公爵領になるわね」
結婚式は王都で、か。
まぁ、1年そこらで街は出来ないだろうし妥当なんだろう。
「その間私に何かあったら困るから、護衛として王家から派遣されたのが彼女よ」
後ろの鎧の女性を指した。
「親衛隊隊員のヴィーラ・デサントよ。よろしくね」
30半ば位で、茶色の髪が腰まである穏やかそうなおばさんだが、さっき窓からだが見えたエレナより強い人の1人だ。
親衛隊は高位貴族の娘しかなれないそうだし、きっと良い家の生まれなんだろう。
「もう1人いるけれどそちらはまた今度ね。今日はお祖父様達に紹介するから来てもらったけれど、普段は朝に屋敷に来て夜には戻るそうよ」
ならいつも通りか。
「彼女達も部屋にいる事が増えるけれど、仲良くするように。いいわね?」
特に俺の方を見てそう言って来た。
【隠れ家】とか上手く隠せって事かな?
「はーい」
まぁ、その辺は上手くやるさ。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】・14枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・27枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】・4枚




