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「おかえりなさーい」
ドアの開いた音にソファーから顔を上げ、声をかける。
「ええ。戻ったわ」
毎度のやり取りだ。
「今日は見学に行ったのよね?楽しめたかしら?」
向かいに座ったセリアーナが今日の事を聞いてくる。
「うん。何か凄かったね……」
「お前より大きかったんじゃないかしら?」
「大きかったね。見た事あるの?」
「学院で国内の生徒は最初に案内されるわ。メサリア貴族の心構えをあそこで教わるの。お前もメサリアの民として誇らしかったでしょう?」
「凄いとは思ったけど……、新領地の開拓でああいうのと戦うのかと思うと気が重いよ」
「アレほどのはそうそういないけれど、領地の歴史に名を刻めるのだから、励みなさい」
俺あまり名誉とかいらないんだけどな……。
「確かゼルキスの結界に使われているのはクマの魔王種でしたね?」
「そうよ。元は他所の魔王種の素材を使っていたけれど、お祖父様が兵を率いて討伐に成功したのよ。30年程前の話ね」
「じーさん凄いんだ……」
荷物を片付けたエレナも話に加わってくるが、ウシでもゾウ位の大きさだったし、クマだともう少し大きいと思う。
王都の騎士達と妙に親しげだとは思ったけれど、じーさんってそのレベルの強さなのか。
「ま、順調に行っても5-6年は先の事よ。しっかり育ちなさい」
気楽に言われたが、それだけあれば大丈夫かな……?
「アレクは色々詳しいし、そろそろ戻って来るから聞いてみるといいよ」
「あれ?連絡あったの?」
アレクはここ3週間程連携の確認がてらルバン達やジグハルトと一緒に王都と周辺領地の魔物の討伐を行っている。
いつ戻って来るかとかは聞いていないけれど、手紙でも来たのかな?
「来月は私の誕生日よ。そしてリーゼルとの婚約の公表もあるし、それに合わせてお父様達も王都に来られるわ。お前、弟と面識あったかしら?」
「アイゼン様?最初に挨拶したけれど、それだけだね」
アイゼン。
セリアーナの1歳下の弟君だ。
ゼルキスにいた頃メイドさん達に、俺はセリアーナ直属だから距離を置いた方がいいと言われて、それを守っていた。
彼はセリアーナに対し比べられ続けてきた事で、少し複雑な思いがあるらしい。
セリアーナは歯牙にもかけないというか、眼中に無いというか……「小物ね」と呟いているのを聞いたことがある。
そういうところなんだろうなぁ。
「お父様とアイゼンは反対の西側の部屋を使うから、顔を合わせることは無いでしょうけど、東側に居なさい」
「はーい」
この屋敷は東側が女性用スペースで、西側が男性用のスペースになっている。
俺は精々誰かを呼びに行く時位で元々近づかないし問題は無いな。
それよりもだ。
「来月誕生日なの?」
「秋の1月14日がそうよ。君がミュラー家に来たのはその後だから、これが初めてだね」
拾われて今に至るまで何だかんだドタバタしていたから、行事とか頭から抜けていた。
「エレナは私の3日前よ。お前は秋の2月だったわね?」
「へ?うん。多分そう」
確か秋の2月末だったと思う。
カレンダーとか無かったからちょっと自信はないが……それよりも!
「2人になにかプレゼントとか用意した方がいい?」
俺は本人に聞く。
女性で雇い主で金持ち相手にプレゼントとか思いつかない。
記念祭の時に買った彫刻は思ったより受けたみたいで、今も机に飾ってあるけれど、また同じネタってのも芸が無いし、どうしよう?
「あら、ありがとう。でも必要ないわ」
「む?」
「全員から受け取るときりが無いのよ。だから、貴族からと後は精々付き合いのある商会くらいね。気持ちだけで充分よ。ね?」
エレナも頷いている。
そういうもんなのかー。
まぁ、そこで競われでもしたら面倒なんだろうな。
「お前の分は考えてあるから、楽しみにしておきなさい」
「……ありがと」
いいのか?
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】・12枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・26枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】・4枚




