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しばらく益体も無い話を続けていたが、俺たち一行は目的地であるアルゼの街の門前に到着した。
今が何時なのかはわからないが、まだ門は開いているようで中に入る事が出来るようだ。
もちろん、閉まっていても俺たちなら手続きをすればちゃんと入れるだろうが、駆け込みで街に入場しようとしている者たちが何組かいて、下手したらその連中は締め出されていたかもしれないんだし、その場合はちょっと白い目で見られていたかもしれないからな。
間に合って良かった良かった。
とはいえ、その並んでいる連中には悪いが、俺たちはお貴族様って事で、いくつかの質問に答えるっていう簡単な手続きだけで検問を終えて、中に入る事が出来てしまう。
それくらいは貴族の特権って事で、受け入れてもらえるよな?
なんてことを考えつつ、優先的に検問を終えた俺たちの馬車が、自分の番を待っている者たちを横目に門を通過するのを、納得させていた。
さてさて。
その仕方はともかく、街へと入った俺たちはしばらくまっすぐ進んでいた。
出発当初の予定だと、このままどこにも寄らずに港まで行って、そこで船に乗って出航……そうなるはずだった。
だが、ここまでの道中色々あったからな。
残念ながらそうはいかないだろう。
「セラ」
ガタゴトと車輪の音が響く中、セリアーナが前を指しながら俺の名を口にした。
「うん?」
敵でも来たのかと、聞き返そうとしたのだが、その前に小窓をノックする音がした。
ノックしたのは御者だろうが、そのすぐ側に馬に乗った者の姿も見える。
誰かはわからないが……セリアーナが伝えたいのはこの事かな?
「出るよ」
一言断ってから小窓を開けると、御者は前の馬車の様子を気にしつつも、何やら困惑した様子でこちらを向いていた。
「どうしたの?」
そう訊ねると、すぐ側にいる騎乗した男を、「この街の兵です」と紹介してきた。
そこで、大体何の用なのかは予想出来たが、
「港に向かう前に、一度代官の屋敷へ来て欲しいとの事です。船の出航の時間もありますし、我々は直接港に向かうと事前に伝えてあったのですが……」
御者は「失礼な事だ」と憤っている様子だ。
事情が事情だし仕方ない部分があるとはいえ、公爵家の予定を一代官が変更させるっていうのは、確かにちょっと失礼かもしれないよな。
いや、大分か?
俺たちは街に到着する前に、こちらの馬車に来たリーゼルから、こうなる可能性を聞かされていたから別にどうとも思わないが、詳しい事情を知らない御者からしたら、いきなり呼びつけられたって思うだろう。
彼だけじゃなくて、他の護衛の連中たちもそう思っていそうだな……。
「セリア様?」
「構わないわ。リーゼルもそうするでしょうし、従うようにと伝えなさい」
「はいはい……。だって」
「……はい」
渋々といった様子ではあるが御者はそう返事をすると、こちらに向かって頭を下げて小窓を閉めた。
耳を澄ませていると、街の兵といくつか言葉を交わしている。
すぐに兵は走り去っていったが、あまり穏やかな雰囲気じゃなかったな。
「ウチの兵たちはあまり面白くなさそうだし、ちょっと揉めそうな雰囲気なのかな? 皆には伝えていないんだよね? 伝えておいた方がよかったんじゃないかな?」
俺は窓から離れると、セリアーナに外の雰囲気を訊ねた。
彼女なら今の外の様子とかもある程度察する事が出来るはずだ。
まぁ、今何も言わないあたり問題は無いんだろうが……。
「問題無いわ」
どうやらそうらしい。
セリアーナは「フッ」と笑うと、口を開いた。
「他所の土地の兵が自分たちの街を武装してうろついているのよ。兵も、上の者ならともかく下の者にとっては面白くないし、警戒だってするでしょう。それが態度にも出ているだけよ。どちらも訓練は受けているし、手を出すような事は無いわ。それでも収まらないような事があったとしても、その時はオーギュストが対処するでしょう」
「そっか。んじゃ、大丈夫だね」
「ええ、それよりも」
セリアーナはそこで言葉を中断すると、目を閉じたままではあるが、周囲を探るように視線を巡らせた。
「街に入った当初に比べると、少しずつ私たちを監視する者の数が増えてきているわね。腕も悪くないようだし……まず間違いなく連中が襲ってくるわね」
セリアーナは、今度は「フッ」とかではなくて、「ニヤリ」といった悪そうな笑みを浮かべている。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




