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フィオーラの施療は、本人の希望により頭部から行うことになった。
頭部、胴体、右脚、左脚、そして残った左腕の順だ。
バランスを考えるなら左腕から始めたかったのだが、左腕、というよりも左半身は刺青が無いのだから後回しにしたかったのだろう。
そんな訳で頭部の施療を行ったのだが、柔道の上四方固め。
あんな体勢で行った。
接触した状態での施療すらほとんど経験が無いのに、お腹の下で見えない状況だから、どうなるかと思ったが意外と何とかなるもんだ。
そして、図らずも今まで抑えめに使っていた【ミラの祝福】の威力を知ることが出来た。
年相応だったフィオーラの顔がパッと見20代半ば位になっていた。
今までも皴や弛みは取ったりはしていたが、ここまで変わるとは思わなかった。
今更ながらこのスキルってヤバいやつなんじゃ……?
神様の名前が付いているのは伊達じゃ無かったか。
服越しでも効果はあった。
裸で抱き着く必要が無かったのは幸いだが、今回みたいな場合だと、服に染料がこびりついてしまうから気を付けなければならない。
で、見た目がそこまで変わって大丈夫なのかとも思ったが、翌日の胴体部の施療の時にジグハルトの反応がどうだっただのあれこれと言っていたが、中年のおっさんおばさんの恋愛事情はどうでもいいから無視していた。
夜の報告会でセリアーナとエレナは興味津々だったのか、ちゃんと聞いておけよとせっつかれたが、そこまでは知らん。
そして右脚、左脚と1日ずつ使い、今日はラストの左腕だが、これはもう手慣れたいつも通りのやり方だ。
「はい。終わり!」
とは言え、1時間しっかり使って完璧に仕上げた。
フィオーラは両腕を掲げて、見比べている。
どっちも大して変わらないだろうが、聞いた話通りなら12~3歳の頃に魔法陣を刻んだって事になるし、何か思うところがあるのかもしれないな。
「見事ね」
我ながらそう思う。
最初会った時は白黒のおばさんって印象しか持てなかったが、今ではすっかり美人なお姉さんだ。
まぁ、アクションムービーのヒロインとかが似合いそうな、強そうな感じだけれど…。
「本当に。刺青を抜きにしても随分見た目が変わったわね。体調が悪くなったりは無いの?」
満足気なフィオーラに今日は学院が休みで、施療に立ち会ったセリアーナが変化を訊ねた。
「むしろ良いわね!昨日もお酒を飲んだけれど、朝も快調だったわ!」
ご機嫌だ。
【ミラの祝福】って内臓にも効いていたのかな?
「そう……」
それを聞き少し考えるように黙り込む。
セリアーナもやっぱヤベーと思ったのかな?
「セラ、【ミラの祝福】はこれからは今まで通り抑えめに使いなさい。いいわね?」
「うん」
「私は普段はヴェールをしているし、刺青が消えた事は気づかれても大丈夫なはずよ。何かあっても貴方達の手を煩わせるようなことは無いから安心しなさい」
まぁ見た目だけならともかく、中身の事はわからないし、大丈夫かな?
「それより報酬の事だけれど、本当にいいの?聞いた話では通常でも1日金貨5枚でしょう?」
俺は基本身内からは報酬を取っていない。
セリアーナなんて夜更かししたからとかでねだってくるし、エレナもその時ついでにやっている。
オリアナさんや屋敷のメイドさん達にもおやつついでにやったりしているし、厳格にやるとかえって動きにくくなるからだ。
「毎日ケーキ持って来てくれたしそれでいいよ?」
お陰で王都の有名菓子店の情報も増えた。
「流石にそれじゃ釣り合わないわ……何か欲しいものは無い?」
「欲しい物ねぇ……欲しい物……」
意外と思いつかないな。
ただでさえ、三食おやつ昼寝付きの生活だし……。
「セラ、確か城の結界に組み込まれている竜の素材を見たいとか言っていなかった?」
「ぉぉ!」
確かに見たかった。
でも、王都の守りの要でもあるだけに、許可を得ないと近づけないとかで諦めていたんだ。
「ああ!それなら私が案内できるわね。大きな爪をそのまま組み込んであるから見ごたえあるはずよ。楽しみにしていなさい!」
王都に次来る機会があるかもわからないし、これは楽しみだ!
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【】・【赤の盾】・2枚