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「コレが効果が無いというのは貴女も知っているでしょう?」
「……そうらしいというのは知っているわ」
フィオーラの問いに言葉を選びつつも答える我らがお嬢様。
正解がわからんからな……。
「全く効果が無いわけでは無いの。ただ大規模魔法を使うのに無意味というだけで」
……ダメじゃん。
「ならどういう効果があるのかしら?」
「魔素を引き寄せるの」
「……?それなら効果があると言っていいのでは?」
「あくまで引き寄せるだけで、自身の魔力と混ぜるのも、発動するのも自分でやらなければいけないわ。そもそも魔素が濃い場所に行けば同じことよ」
「なるほど……」
「後は精々心理的なものね。魔法陣を刻み込んだこと、また魔素を近くに感じる事で使えると思い込んで、試す勇気を持てるってだけ」
プラシーボってやつかな……?
しかしそこまでハードルが高いのか。
大規模魔法ってやつは。
「ねぇ、わかる?ここまでやって無駄だったと気付いた時の気持ち。私が強力な魔導士であることに違いは無いから皆面と向かっては言わないけれど、すっかり腫れもの扱いよ」
「そう。つまりソレを消したいって事でいいのね?」
「ええ。その娘の事は耳にしていたわ。貴方がまだ王都にいるうちに魔導士協会を通して依頼をしようと思っていたの」
「引き受ける相手はこちらで選んでいたけれど、貴方ほどの者ならわざわざ私の下に付かなくても、受けていたわ。それで良かったの?」
「環境を変えたかったのよ。王都はもううんざり……ジグハルトの誘いは丁度良かったわ」
「ジグさんと仲いいの?」
「仲が良いって程じゃ無いけれど、実戦で大規模魔法を使う者同士で彼が王都に来た時はよく情報交換をしていたわ。その時にこの魔法陣の事や環境を変えたいとか話したことがあるけれど、それを覚えていたのね」
……それ仲いいんじゃね?
「ジグハルトとの仲も気になるけれど、セラ。出来そう?」
「どうかな……?傷跡とかなら治せるけれど、これはまたちょっと違うし。少し試してみてもいいかな?」
「ええ。お願い」
そう言い、右手を出してきた。
それに手を重ね【ミラの祝福】を発動してみる。
「お⁉」
なんとなくだが、押し返されるような抵抗を感じた。
効果が無いなら何のとっかかりも無く、すり抜けて行くような感じなのだが、これならいけるかもしれない。
◇
「変化は無いわね……?」
相変わらず刺青で黒く染まったままのフィオーラの右腕。
「てごたえあったよ?」
1時間がっつりと気合を入れて施療を施したのだが…おかしいな?
抜け出るような感覚はあったし、いけてると思うんだけど。
「……っ⁉」
何か息を飲むような気配がしたけど、何か異常でもあったんだろうか?
ちょっと頑張り過ぎてエレナの膝の上から動けねぇ……鼻血とか久しぶりだよ。
「フィオーラが指で拭ったら取れたわ。染料が肌に浮いていたのね」
うつ伏せになっていて状況がわからない俺に、何があったのかセリアーナが説明してくれる。
「へー……」
「ええ!見事だわ!」
弾むようなフィオーラの声。
うんうん。
上手くいって何よりだ。
「肌も左に比べると随分若返っているわね。これなら全身やらないとバランスが取れないわよ?」
ジグハルトと同い年と言っていたし、40半ば位か?
太ったり弛んだりはしていなかったが、まぁ年相応って感じではあった。
「そうね!できるかしら?」
「……今日は無理そうね」
「むりだねー」
もう今日は何もしないぞ!
「確か接近すればするだけ効果が高まると言っていたわね?お前明日から抱き着きなさい。一々手でやっていたら時間がかかり過ぎるし、毎回そうなるのは嫌でしょう?」
「私も構わないわ」
ふむ……。
コアラみたいな感じになるのかな?
「わかった。そうしてみるよ」
服越しでも効果があるのか試せるし、悪くないか?
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【】・【赤の盾】・2枚