1009
「下がるわよ!」
「ほい来た!」
思わぬ速攻で一人を仕留めたセリアーナは、そこで二人目も……等と欲を出さずに、すぐに護衛たちの元へと下がっていった。
もちろん、背後にも注意を払っていて、隙を見せるような真似はしないんだが、それでも交代と合流っていう、ウチの兵たちの隊列を崩すような行動にもかかわらず、賊連中は何もしかけようとしてこない。
……手を出しあぐねているって感じかな?
結局、俺たちが合流を果たすまで、先程の陣形の乱れを整える程度だった。
後方のやる気無い組も同様だ。
「動かないね……」
「動けないのでしょう。貴方たち」
向こうの様子を見て思わず呟いた言葉をセリアーナが拾い、俺に一言訂正すると、兵たちの隊長と冒険者のリーダーを呼び寄せて、どう動くか……等の簡単な指示を出していた。
その間俺は賊たちの観察を続けているが、連中も動く様子は無いな。
相変わらず向こうは、やる気のある組と無い組で温度差があって、遠目からでも分かれているのがわかるし、向こうもそう簡単には動けないんだろうな。
やる気無い組も、積極的に攻撃をする気は無くても裏切る気は無いようだし、明らかにこちらが不利な状況になったらどうなるかわからないし……俺から見たら変な関係なんだが、一人殺されても雰囲気に変わりは無いし、彼等からしたらこれで正常なのかもしれないな。
チラっとセリアーナとの話で触れはしたが、中々理解しがたいな。
「セラ」
「うん? どうかした?」
セリアーナの声に下に顔を向けると、他の二人も俺を見ていた。
話は終わったみたいだな。
向こうが気になって聞き逃してしまっていた。
「……話は聞いていなかったのね。いいわ」
セリアーナは呆れたように一つ溜息を吐くと、二人を仲間の下に戻らせて、俺を自分の口元に来るように指でチョイチョイと示した。
「これから一気に賊を殲滅させるわ。もちろん私も参加するから、お前もあまりボーっとしていては駄目よ」
「……ぬ、了解。オレたちから仕掛けるんだね?」
「ええ。後ろの連中の考えが変わらないうちに、さっさと片付けるわ。先陣は王都の兵で、彼等に中に切り込んでもらって向こうの隊列を崩させるわ。さあ、行くわよ」
セリアーナはそう言うと、隊に合流するために移動を開始した。
なるほど……まずは向こうの陣形を崩して、俺たちはそのおこぼれを倒していくんだな。
さっきの様に上手くいくかはわからないが、相手が一人なら俺とセリアーナが危険な目にあうような事はまず無いだろう。
……よし。
やりますかー!
俺は気合いを入れて腕をグルグル回すと、セリアーナの後を追った。
◇
さて。
こちらの陣形が整うとすぐに、先陣を務める王都の兵が突撃していった。
向こうはどうやら俺たちが時間稼ぎとまではいかなくても、そこまで積極的に終わらせに来るとは思っていなかったのか、露骨に対応がバラついていた。
距離もあるし、弓を構える余裕くらいはあっただろうに、矢を撃って来なかったもんな。
その時点で、こちらが一つ優位を取っていた。
もちろん、相手も腕は立つんだし、多少の混乱程度で総崩れ……とはならずに、それなりに踏ん張っていた。
ゴチャゴチャした乱戦になりながらも、俺たちと位置を入れ替えて挟み込もうとしたりと、色々状況を打開しようとしている。
やる気無い組とはいえ、そこまで有利な状況になったら仕掛けてくるかもしれないし、俺たちもそこまで追い込まれると、どうなるかわからない。
リーゼルたちも今は戦闘の真っ最中だし、援護は難しそうだもんな。
だから、その事態を避けるためにも、こちらが纏められない様に適度に距離を取りながら、相手の牽制を行っている。
んで……。
「…………たっ!!」
この乱戦で、仲間から離れてしまって孤立する者も出てくる。
俺はその孤立している者を見つけ、セリアーナの下から離れてこっそり回り込むと、相手が気付く前に蹴りを放ったのだが……。
「っ!? ちぃっ……!」
「……ぉわっ!?」
賊はどうやって気付いたのかはわからないが、蹴りを盾で足の側面を殴る事で回避した。
カウンターで攻撃を受けるような事は無かったが、まさか盾で受けとめるんじゃなくて、殴って逸らしてくるとは思わなかったな。
相変わらず不意打ちが下手だな……俺。
不意打ちにもかかわらず、しとめ損なったことに少々気落ちしていると、背後のセリアーナから声が飛んできた。
「セラ、戻りなさい!」
「……りょーかい」
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




