05 召喚獣
彼はこちらに歩きよってきて、私の腕をぐいっと引っ張った。
「いたっ!」
強い力に顔をしかめていると、「チッ」と舌打ちされる。
そして、腕を掴む力が弱まった。
でも、彼は不機嫌そうなままだ。
私は何か彼にしてしまったのだろうか。
会った事はないはずだ。
相手の顔に見覚えはない。
浅黒い肌に、健康的に鍛えられた肉体。
頼もしさを覚える長身の背丈に、目に眩しい赤い髪。
そして、意思の強そうな燃える炎のような炎獄色の瞳。
「数百年ぶりの召喚主がこんな泣き虫女だとはな。とんだ期待外れだな」
だが、と彼は「見た目は悪くない」と顔を近づけて私をまじまじと観察してくrる。
何だかとても偉そうな態度の人だった。
一体何様なんだろう。
「何、あなた一体」
どうして私に声をかけてきたのか分からず、尋ねると、彼は「ついてこい」とでもいわんばかりに先を歩きはじめる。
「さっさと来いよ。お前を守ってやる。こんな危険な場所から離れたいんだろ」
「えっ?」
まさか、禁術使いだという事がばれた?
うろたえるのだが、彼の様子があまりにも普通だったため、敵なのか味方なのか判断がつかなかった。