03 回想
私は禁術使いとして目覚めてしまったらしい。
遺跡の、見知らぬ区画に立ち寄った際に、不思議な声を聞いたと思ったら、強大な力を受け取ってそれを行使していた。
体の中に流れてくるその暖かな力は、決して邪悪なもののようには見えなかったのに。
そのまま強い力を使った私は遺跡の一区画を吹き飛ばしてしまって、今に至る。
本当は素直に訳を話すべきだった。
誰かを傷つけようとしたわけでも、誰かを陥れようとしたわけでもないという事を説明すべきだった。
何もやましい事が無いなら、言葉を尽くして分かってもらう努力をすべきだったのだ。
けれど、私は逃げてしまった。
だって、あの国では、私の生まれ育った国では、禁術使いは大罪人を象徴するものだったから。
だって、今まで親しくしていた人達の、表情の変わりようが、目の色の変わりようが、苦しかったから。
きっと、うまくいく確率は低かった。
言い分を聞いてもらえる可能性が低かったから。
問答無用で牢屋に入れられてしまうと思って逃げた。
牢屋の中で一生を過ごす。それだけならまだいい。
濡れ衣を着せられて、血も涙もない犯罪者として裁かれ、国中の人から冷たい目で見られながら、見せしめに殺されてしまうかもしれない。
そう思ったら、足が動いていたのだ。