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希望は空の向こうに  作者: 伝播
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日常は壊れない。そう信じていました。

 2017年7月11日に震度5強を記録して以来のゆれ…というニュースをさくらは帰りの電車に揺られながら読んでいた。

「みんな騒ぐ必要なんてないのに」

 そう思いながら、地元のニュースサイトに目を落とす。『鹿児島県では2017年7月11日の鹿児島湾を震源とする地震以来の震度5強を観測しました。本日16時43分ごろ地震がありました。震源は錦江湾、マグニチュードは5.4、震源の深さは約10㎞。津波の心配はありません。各地の被害は、小学校2校中学校2校で外壁がはがれるなどの被害が報告されています。姶良市加治木町では、脚立に乗っていて作業をしていた男性一人が足の骨を折る重傷を負っています。震度4を観測した薩摩川内市の川内原子力発電所は現在1機が運転中、1機が定期点検中ですが、地震による異常はなく、運転を続けています。周辺モニタリングポストにも異常はありません。……』

 たくさんの情報にめまいがする。とにかく、異常はないのだから良いのだ。そう思ってさくらはサイトを閉じ、音楽ソフトを立ち上げた。


 家に帰りついて、まず一番最初に行うのはテレビをつけること。ちょうど21時前なのでローカルニュースをやっていた。当然トップニュースは地震。終わったのだからいいと思うのだが、大きな事件であることは間違いないのでしょうがない。

 黙ってそのままテレビをつけておく。人気のオカマタレントが素人さんにいろいろなものを紹介してもらう番組が始まった。ぼーっと見る。

 ごごごごごごごご…

 地鳴り。そして、ゆれ。夕方から何度となく地震が続いていた。

「余震って言ってたっけ?」

 お局の橋元さんがさくらに教えてくれた。橋元さんの弟さんが詳しいらしく、橋元さんもその話を聞くうちにそういう知識が増えたのだそうだ。そして、この余震はしばらく続くらしい。

 テレビを見ながら、地元の宮崎の友達から入るSNSに返信を返す。大丈夫だよ、心配ないよ。

 そう打ちながら、橋元さんが言っていた言葉を思い出した。

「余震って言ってるけど、もしかしたらさっきのでかい地震が余震ってこともあるの。そして、桜島がやばいし、今日の震源って……うまく言えないけど桜島にとってあまりよくない場所らしいから、今後大きな災害になるかも。弟ってこういうことに詳しいんだけどね、弟も念のために非常持ち出し袋点検して、食糧備蓄とかも考えたほうがいいってメール送ってきてるのよ。私はその言葉信じられるわ。そういうのバカにしている人は日常が崩れないって無意味に信じてる人だって。そういう人は日常が崩れることに耐えられないって」

 日常が崩れること?

 さくらは意味が分からなかった。こういう日ってずっと続くと思っている。なんでこれが崩れるって思えるのだろうか? 今までもこういう話は避難訓練などで聞いてきたが、訓練だけやってそうなった覚えはなかった。だからそうならないと自分は信じている。大災害に巻き込まれるというのは、運の悪い人なのだと思っている。

 ただ、周りの人がそう考えていないということに少しショックを受けたのだった。そして、友人たちがさも自分が災害に巻き込まれた人のように扱うことに怒りを覚えた。

「コピペで返信でいいや」

 大丈夫だよ、心配ないって。それをいたるところにはりつけた。電気もガスも水道も交通も止まっていない。地震があっただけで、特に自分の日常は変わっていないのだから。


 夜中。

 ごごごごごごごごごごごご…

 再び地鳴り、そして激しい揺れ!

 昼間よりも激しい感じでさくらは飛び起きて、携帯をつかんだ。つかんだそばからブイッブイッブイッ…携帯が震えだす。そして暗い部屋の中で何か物が落ちる音がしている。画面には緊急地震速報。震度6強。

「強いってこと?」

 幸いベッドの上には物がないので、何かに直撃されることはなかったが、たぶんものが落ちているだろう音はしている。

 ゆれがおさまり、電気をつけて確認する。本が雪崩を起こしていたり、アクセサリーかけのアクセサリーが散乱していたり…ということ以外は家の被害はなかった。

 それ以上自分に何もなければ、ということでSNSで直接話しかけてきた友達にさっきのコピーを返して、そうしながら寝てしまった。


 翌朝。出勤しようと駅に向かうと、人だかりができていた。バス停のほうに並んでいる。よく見ると電車が止まっていた。

 土砂崩れのため。

 そういう張り紙を見て、さくらは職場に遅刻の連絡を入れた。

日常は壊れないって信じている人多いなぁと思いながら、書きました。普通はそうなんですよね。

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