エピソード4 『ゲームの幕開け』
「どこだ……ここ……」
自分の視界にめいいっぱい広がる緑、緑―緑。
ニート生活により大阪から出なかった俺にとって、眼前に広がる大自然は俺の虚を突くには充分すぎる光景であった。
空は雲ひとつない晴天だ。
眼前には山をひとつ丸々覆う木は東京タワーを想起させるほど背が高く、その木々の間には鳥が羽ばたき青空には近代の景観の象徴である電線やビルなどもちろんありはしない。
しかし、この大自然だからこそ悪目立ちするものがひとつ。
一台のトラックだ。
木々の間にポツンと、長らく放置されもとからそこに居たような大きなトラック。
俗に言われるボンバディ型の大型トラックで、それは俺が常日頃からゲーム内で操作してる愛車のそれと同じであった。
故に少し安堵した。このトラックだけがゲームであるかくたる証拠であり、俺の全てだからだ。
「視界は……動かせるな。しかし……ゲームのクオリティじゃないよな……最新でもこんな現実に近くはできねぇよぉ……」
つぶやき俺はトラックに近付こうと試みた。ゲームならここで意思に「動け」と伝達したところで画面に変化は生まれないはずだ、とりあえず「歩く」ことに集中する。
……となんと右足が動き始めたのだ。
これはゲームじゃないのか?
恐る恐る左足にも意識を向ける。不思議なことに、現実のように自分の思う通りに足が動いてしまう。
思わず「なんだこれ……」と言うほどの違和感。
ゲームであることが証明できそうな何かを探そうとしたが、それはこの世界が本当に存在し、他人があるかどうかを確かめるほど困難だ。
これは宇宙、いや世界の根源を探ろうとするほど無謀なので俺はとりあえずこの今ある現実を受け入れることにした。
とにかく慣れなければ……。
足に意識を集中し、歩く、歩く。
あと数歩でトラックに触れられる距離でそれは起きた。
石に躓いたのだ。
当たり判定があるかどうかすら怪しかったが、その怠惰さで石を無視して進もうとしたのが失敗だったであろう。
そして体の重心がずれる。
すなわち次に起こりゆる事象は「転倒」にほかならない。
視界が、景色が流れるように上へ。
そして視界が足元あたりまで落ちる。
頭に強い衝撃を受ける。
―暗転。




