エピソード33 『この世界で』
ブロロロッと響く軽快な走音。
煙が舞い、焦燥感が鼻の奥を灼く。
聞こえているのは争いの協奏曲。
路上の戦場を花びらのように舞うトラックが少年――谷川 ゆうまの思考を加速させる。
ハァッ…ハァッ…ハァッ…右―!!
眼前に現れたのは正体不明の立体オブジェクト、通常のプレイヤーならその圧倒的な巨躯による事故は必至。しかし彼もまた"ゲーマー"であり…
「――俺はトラックで…!!」
限界に近づいたタイヤが悲鳴のような音を鳴らしながら道路を焦がしてゆく。
視界右上に映し出された『ping 12』の表示。
そしてオブジェクトに衝突する―刹那、俺は元いた位置から数mほど後退する。
しかし、その現象を俺は先読みしていた―
俺はなにもないカーブの手前で左にハンドルを切る。
これが俺の必殺技―
クライアントの処理と、サーバー側の処理の相違によって生み出される軌跡―
俺は"フォレストドライバー"だ。
* * * * * *
"評定:卒業"
この一文が、彼"谷川 ゆうま"に喜びの感情を与えた。
毎日出席し、成績も優秀。親や親戚からも『次の総理大臣はお前だよ!』なんて言われている。
そんな俺は大阪を出て、東京の有名な大学に出ることに決めたのだ。
東京での暮らしにも慣れてきたころ、成績や授業にも余裕が出来てきたのでゲームを始めることにしたゆうまは、Buntubeでたまたま見かけた「Jaja's Truck Simulator 3」を始めることにしたのだ。
2018年、VR技術が大きく進化し今は据え置きハードを使用するようなソフトは一般的ではなく、VRゲームこそがゲーム業界の売りとなっている。
その中でもシミューレーションゲームとして2018年に発売された"JTS"こと、『Jaja's Truck Simulator 3』は全世界でアクティブユーザーを3000万人を超える超人気な作品の1つとなっていた。
―ゲーム内容はただひたすらトラックを運転することのみ。
Jaja'sという会社が唯一だしているゲームで、一作目がないにもかかわらず『3』をつけSNSで話題になることもあった。
ゆうまはこのゲームで天才的な頭脳を駆使しアジアランキング1位まで上り詰め、『JTS』のオフライン大会に出場することになったのだ。
そして彼は大会中に、運命の出会いをすることになることは、この時はまだ誰も知らない―――。
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約3年間、突拍子もない話に付き合っていただいた方にとても感謝しています。
完結することが出来て、僕自身とてもうれしくもあり、少し寂しさも感じています。
また新しい物語がかけたのなら、そこでまたお会いしましょう。
レオン




