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山奥ドライバー ―ping999―  作者: レオン
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エピソード30 『出発』

外に出た一行は、外を見上げる。


―― 一行の中に老人の姿が見えないが、ジンは「足腰が痛くての、ワシはここまでじゃ。あとは若いのがやったらええ」といって研究室に置き去りにされてしまった。


空には赤く不気味に、この世界を嘲笑うかのような輝く十字架が浮かんでいた――というよりかは、球体の隙間から漏れ出た光が十字架のように輝いていた。


「ぼんやりであまり見えないけど、うっすら球体が見えるわね。あれがきっと...」


「そう、あれが核さ。」


ゆうたは核をにらみつけるように見つめ、自然と拳を固くする。

ぼうぼがおもむろに硬くなった拳を握り、ゆうたはハッと意識を取り戻すかのようにその温かい手のぬくもりを感じていた。


「ぼうぼはここに居てもらいましょう、世界が安全になるまで。」


ゆうたが提案するとライトニングは首を横に振った。


「君が戻したあとの世界には、この計画以前の世界にはぼうぼ君は居ないだろう。そして君の知っている人や、家族 友人 恋人・・・は居ないか」


なんだろう、心が痛いぞ


「失礼、そんな人達がいないくらい過去に戻ることになってしまうだろう。だからこの世界に安全を求めるより最後までそばで見てもらったらいいんじゃないかな」


ライトニングは温かい目でぼうぼを見つめると、ぼうぼも「ついてく!」としがみついてしまった。


恋心を知らない少年ゆうたであったが、ゆうたはぼうぼには恋心よりも深い、家族に感じる愛のようなものをぼうぼから感じていることに気づいた。


これが、家族の愛なのかな


ゆうたは決意するとぼうぼの手を握り返し、


「よし、俺達は家族だ。一緒に行こう...!」


とぼうぼに約束するのであった。



* * * * * *



「んでこれが核までの特急便というわけさ」


ライトニングが広げた模造紙によると、今研究所の地下に眠る小型ロケットで向かえるらしい。


「案内するよ」とライトニングが向かった先は研究室の本棚。

全員が不思議そうにしていると、ライトニングは本の一部を深く押すと、なんと本棚が開いたのだ。


「こんなのスパイ映画でしかみたことねぇぜ...なぁ...」


いつもうるさいけいちゃんでさえも顎が外れたように驚愕していた。


「さぁ入って」


と手招きされると、高級ホテルのエレベーターのような内装に3つしか無いボタンが備わっていた。

ライトニングが下のボタンを押すと、それは動き出す。


「案外エレベーターに乗ってるみたいな感覚はないのね、私苦手だから身構えちゃった」


なんて八夢が話すと、いたずらのような笑みを浮かべたライトニングが中段にあるボタンを押すと、内装の一部が開き窓が現れた。

八夢が恐る恐る窓を覗き込むと、ものすごいスピードで岩が下から上へ登っていくのが見え、真っ青になった八夢が倒れかけたのをライトニングが介助し「と、このエレベーターはすごいスピードで下降しているのでご注意してください」と笑った。

八夢は「もっと早く言いなさい」とうめき声を上げるのであった。



リーンと、鈴のような音がなったかと思えばエレベーターの扉が開く。

すると、スパイ映画顔負けの軍事施設のような建物の中にゆううたたちは立っていた。



「あれが今回のる僕たちのロケットだよ」


と指差した先はなんと乗用車のようなものだった。



「通称ロケットカーっていうんだけどね。政府と軍が共同で開発した空飛ぶ車さ。これはオクタン号、人類史上最初で最後のロケットカーさ。」


「おいおい本当にこんなんが空飛べんのか?なぁ」


怪訝な目で車を様々な視点から見ては触るミーハーのようなけいちゃんが当然の疑問を持つ。


「なめてもらっちゃ困るね。僕も馬鹿げた計画だと思ったがかなり柔軟に空を飛ぶこの車は世紀の発明と言っても過言ではないさ。スーパーソニック状態、つまり音速を超えた飛行まで可能だよ。」


ゆうたはキラキラと目を輝かせた。ゆうたの好きなゲームの一つの車にそっくりだったからだ。


「これ...乗ってもいいの?」


「もちろん、乗ってもらわなきゃ困るさ。君にはこれに乗ってボルボに接触し、過去を改変してもらいたい」


「わかった。操作はなんとなく知ってる..と思う。問題はどの過去に戻ってどうやって修正するかだね」


「それはこの僕が書いた"最強のマニュアル"にそって動いてくれればいいよ。持っておいてくれ」


懐から大学ノートのようなものをゆうたに渡す。それにはマジックで"最強のマニュアル"と書いてあり、少し不安になった。


「センスいいね...ありがとう。」


「さぁ時間がない、ゆうたくん。ぼうぼくんを任せたよ。」


そう言うとライトニングがゆうたの背中を押す。

ゆうたは背中にライトニング以外の手の感覚も感じていた。


それは八夢、けいちゃんだった。


「俺ァよぉ、お前ェと短けェ付き合いだったけどよォ...親友みたいに思ってたンだぜ...なぁ」


涙ぐむけいちゃん。


「私の過去まで救ってきなさい。」


キリッとした顔で八夢もゆうたの背中を押す。


「ありがとう、みんな、俺、不甲斐ない俺だけどやってくるよ...!」


そういうとゆうたはロケットカーの運転席に乗り、ぼうぼを隣に乗せシートベルトを付けさせてやる。


エンジンを吹かすと、マフラーから勢いよく煙が吹き出す。


「行ってくる...!」


振り返るとそこにはさっきまでキリッとした顔をしていた八夢の顔がしわくちゃに崩れながらも、保とうとして、応援する気持ちが伝わってきた。


けいちゃんも手を振り見送っている。


すでにそこには自分の手出しができないと悟り戻ったのか、ライトニングの姿は見えない。


車が体制を変え、体を天井に向ける。すると、天井が2つに割れ、ロケット発射台のように宇宙への軌道を示してくれる。


ロケットカーはそれを待っていたかのように道を定めると、車の後方からジェットエンジンを吹かしものすごいスピードで天を昇っていく。



高く。



高く。





希望の過去へ向かうために――






八夢は涙で視界をぐちゃぐちゃにしながらも長い間見届けていた。











地上を少し離れたところで、勢いよく爆発するロケットカーを。












エレベーターの中でにやりと笑い、起爆スイッチを押したライトニングが、エレベーターのドアを閉め、高く




高く昇るのを。




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