エピソード29 『世界の核』
少年 山川ゆうたは目つきが少し変わった用に見える―とライトニングは思った。
少年 山川ゆうたは心がまっすぐになった―とけいちゃんは思った。
少年 山川ゆうたは男らしくなった―と八夢は思った。
この少年は今、たった今、変わりつつある。自分の使命を自覚し、運命を変えようともがくこの少年の魂にこの場の全員が感嘆し、焦がれる。
その力に畏怖することなく、その力に支配されることなく、すべての経験をいま力に変えこの世界を救うべく、立ち上がる。
「どうすれば、僕はこの惨状を止めることができますか?」
「いいクエスチョンだね。じゃあ早速始めようか」
ライトニングがグッドサインを出すと、棚からあるファイルを開き、机に何やらいろいろと文字や図形やらが書かれた模造紙をがむしゃらに広げる。
その中心に見覚えのあるようなないような、既視感のある物体が書かれていた。
"JAJA"
装置のようなその物体にはそんなロゴが書いてあった。
「これはなんですか?」
「これはね、この世界の核さ。」
「核?」
とゆうたが問うと、ニヤリと笑ったライトニングはポケットから小さな六角形の機械を出し、それを模造紙の真ん中に置く。
すると、六角形のその真ん中、カメラのレンズのようなところから立体のホログラムが浮かび上がった。
「んだこれ、すっげぇ近未来じゃねぇか、なぁ」
「ふふ、君たちの生きていた偽の時代にはこんな技術無かったし、驚くのは無理もないね。正真正銘、君たちからしたら未来のマジックアイテムさ」
青っぽく輝くホログラムには、先程模造紙に書かれていた"核"と呼ばれていた機械が立体的に浮かび上がる。
"JAJA"とロゴが入った球体はカプセルのような構造をしており、真ん中に切れ込みが入っているようだった。
「ここを見てくれ。この切れ込みこそが今回の計画の要だ。」
「そもそもこの機械?はなんなの?」
と八夢が首をかしげる。
「これは説明するのが難しいんだが、この世界の均衡を保つための装置―といったらわかりやすいかな。この世界は終焉に向かっていることは説明したと思うんだが、終焉をかろうじてフェイクの箱庭を創り出すことで食い止めているのがこの"JAJA"システムだ。」
ライトニングはホログラムを指で操作し、カプセルを割った。すると中には人間のようなものが入っていた。
ぼるぼはそれを見ると、すごい興味を示し触れようとする。
「ぼうぼ、これ、知ってる」
「これは"ボルボ"と呼ばれる、この核を動かすための動力源のようなものさ。
そう、かつて"ドライバ"と崇められていた二つの神の片割れ、その復元体さ。」
「・・・?」
きょとんとするぼうぼに同調するようにゆうたは疑問を持った。
「ドライバは過去に戻す異能を持つ神なんじゃないの?なんでこの中に...」
「ぼうぼくんには難しかったよね。ゆうたくんもそのとおりさ。
君たちにわかりやすく説明すれば、過去に戻すというドライバの力を逆手に取っていることになる。」
「逆手に...?」
「つまるところ、ドライバの力というのは"時間操作"に他ならないんだ。それを発見した有村率いる研究チーム、いや、本当の黒幕はワタナベか...この際どっちでもいいが、大阪湾の地中深くから発掘された"Jaja's Index"から得られたデータと、それに付着していた遺伝子から複製された"ドライバ"の出番だ。
彼らは"過去に戻す"なら"過去を固定する"ことも可能なのではないかと考えたんだ。
そこでボルボと名付けた女神、ドライバの片割れをこの装置につなぎとめ"時間操作"という神の力を手に入れてしまった。
君たちを22年前の箱庭に縛り付けていたのはこの装置だ。」
「これが...元凶...」
「んじゃぁよぉ、この装置とやらをぶっ壊せばいいって訳か?なぁ」
力こぶを作るけいちゃんは鼻からけぶりが出そうなほどやる気満々だ。
「そんなことしたらこの世界の終焉はますます近づくだけさ!!」
すかさず突っ込むライトニングはコホン、と場を落ち着かせ解決策を提示する。
「僕たちが今やらなければならないのは、この装置を利用してこの世界を過去に戻すことなんだ。」
「この世界を...なるほど!終焉の原因を排除すれば...!」
「八夢くん、そのとおり!そしてココにはキーが揃っているのさ。ゆうたくん、君のことだ」
「ドライバの複製である俺がボルボと接触することで過去に戻せばいいんだな!」
希望が、活路が見え始め、士気が上がる。かつてないほど、この場の全員の目はキラキラと輝いていた。
「それでよぉ、この核っていうのはどこにアンだ?なぁ」
「それはね...」
ライトニングが指した方向は、天井。
みんなが天井を見上げる。
「この上ってことか!んじゃ話は早ぇなァ!」
「違うさ、この空の向こう。」
「空の...?」
「宇宙さ」
士気が上がっていたこの部屋に唐突に寒気が走り出し、キラキラと輝いていたその目から輝きが失われるのは、そう難しいことではなかった。




