エピソード2 『俺がオタクになった日』
自分の人生が壊れてしまった日なんて、思い出したくない。
しかし現実は残酷に、その日を軸として今日の自分を形成してゆく。
過去に行った行為がそのまま今日の自分に帰ってくるのは当然。
そして逆に未来、自分がどうなりたいかという夢をどう物語っていても、実行に移しそれが過去となったときにしか自分は変えられない。
その時のゆうたは、15歳であった。
* * * * * *
「練習終了!!」
コーチのその掛け声とともに、汗水を垂らしながら練習をしていたメンバーたちは「ホッ…」と吐息を漏らす。
ゆうたはこの時いわゆる"体育会系男子"と呼ばれるもので、そのルックスに反しながらもラグビー部に所属していた。
時期はまさに受験期の終盤。高校に進学するために受験を行い結果を待つものや、推薦等により受験を終え、このゆうたのように一汗を書かるものまで様々だ。
当然、受験を終えると勉強という束縛から解き放たれ受験生たちはつかの間の"自由"を得る。
自由を得たゆうたはラグビーに励み、その肉体を強化するしか暇をつぶせなかったのだ。
しかし練習を終えるとその暇つぶしもできなくなる。
「ただいまー」
誰も居ない家に一人、練習を終え帰宅したゆうたはまたも暇つぶしを試みる。
読書、違う
寝る、今は気分じゃない
Buntube…これだ!
Buntubeとはこの頃はやり始めた動画配信サイトで、無料で様々な動画を楽しめるサービスだ。
アカウントを作成すれば誰でも動画を投稿できるので、このSNSの勢いは時間とともに加速している。
もはや暇つぶしにおいて右に出るSNSはこれとOwatter意外にそうないだろう。
『おもしろどうが』
と検索バーに入力する。Buntubeはそれだけで星の数ほどの該当する動画を表示する。
お笑いでも見るかな…。ゆうたは静かにマウスを『【コント】おむすびマンのコント 爆笑必至』に合わせた。
はずだったのだが――
「へくしっ」
くしゃみをしたはずみにその下にある変なオタク向けの動画にカーソルを合わせクリック。
「趣味じゃねぇよぉ…」
すぐにブラウザバック。
しかし…
「やっぱちょっと気になるんだよなぁ」
後で気になって動画を履歴から探し出した。
どうやらそれはなにかのアニメのようだった。
映し出される"いかにも"な擬人化した艦船の美少女がこれまた擬態化させられた敵の艦隊をなぎ倒してゆく。
個人で創作されたアニメのようだったがそれは元ネタのゲームがあるらしく、それも『フリート収集』というものだった。
ゆうたは今思えばなぜ、このゲームに惹かれてしまったかがわからないが、無意識に一番オタクだと思った友達にゲームのやり方を聞いてしまったのだ。
3月9日
ついに念願のゲームスタートである。
ゆうたにとっては歯車を狂わす地獄の門の扉であることは、今はゆうたには理解できなかったであろう…。
つづく




