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山奥ドライバー ―ping999―  作者: レオン
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エピソード22 『偽物』



こんな話を聞いたことがある。


フィクションの映画だそうだ。


そこには青年が居て、何不自由ない幸せな暮らしを送っていた。しかし、ある日そこがすべて偽りであると悟ってしまう。

そう、彼は生まれたときから研究者の箱庭で生活をしていたのだ。街ゆく人々はエキストラ、狭い街を越えようとすればそこには壁がある。

今まで本物だと思っていた生活に裏切られる――そんなお話だったと思う。


本物かどうかなんて一見わからない。ある日突然死亡して「お疲れ様でした」という声とともに現実がフェードアウトし、"本当の現実"に帰ることもあるかもしれない。ただ、それらは自分の力では検証しようもない―否、人類には検証しようのない事だ。


だから、今の現実に甘んじる。


今見ているものが全て本物だって、そう感じる。





だから俺は今まで気づかなかったんだな――これが偽物だって。



* * * * * *



「そろそろ…か。」


男はつぶやくと、立ち上がった。


眼前に広がる風景はお世辞にも綺麗とは言えなかった。

人々の死体。役目を終えた薬莢。先刻まで意味を持っていた観客の飲食物が床に散乱し、歩けるスペースをそこに見出だせない。

しかし男はあるきだすこともなく、ただ空の一点を見つめていた。



空中に浮かぶ、淡い赤色に光り輝く十字架を。



「時は満ちた。」



おもむろにポケットからタバコを取り出し、それに火を付けずに咥えちょうどいい瓦礫に腰を掛けた。


有村は長年待っていた時が来た余韻をじっくりと、ただひたすら味わっていた。




* * * * * *




ガツンッと衝撃が頭部に走り意識がぼうっと戻る感覚を噛み締めながらゆうたは目を開けた。

どうやら寝ていたところ体勢を崩し頭を床に打ち付けたらしい。


「ここは……?」


返事はなかった。ただ、ここが何故か懐かしいと感じた。

屋内らしい。記憶を遡れば、最後はトラックに乗っていたはずだが……。


俺は立ち上がると、光が差し込む一つの部屋に足を向ける。

機械音が壁に反響しビープ音のようなものが漏れていた。

恐る恐るその部屋を覗き込むと、面識ある顔が並んでいてホッとする。

殺風景な部屋だった。

機材がおいてある他、余分なものは一切あらず、一つ目を引くのは円形の水槽だ。

中には水が入っており、時々下から空気が漏れている。

八夢やぼうぼ、ジンはマグカップ片手に談笑をしていたようだ。俺が入ってきてからは真剣な眼差して見つめられてすこし照れる。

けいちゃんも同じ眼差しで俺を見ていた。しかしその眼差しの意味を俺は知っている。勇気を振り絞り、意識が途切れる前の質問への返答をした。



「偽物だったんだな。俺たちは。」



その声に目を丸くして反応したのはけいちゃん。瞬時に表情を戻し咳払いをすると「そりゃ話が早い」と言い立ち上がった。



「聞いてくれ、みんな」



「もう薄々気づいていたとは思うが、俺達は偽物だ。意味はもう、わかるはずだ」



ぼうぼはきょとんとしていたが、皆は無言でうなずく。



「俺たちは生まれも育ちも一緒――見てきたものもな。今ある記憶はすべて偽物だ。研究者共が勝手に作り上げたクローンに……好き勝手不幸な記憶を植え付け、この馬鹿げた賞金大会の見世物に仕上げたわけだ。

俺たちは所詮、飼いならされていた闘牛ってわけだ……なぁ」



けいちゃんの言葉は正しかった。すべて事実だ。各々もそう感じていたのだろう、表情が冷め憂鬱なオーラがその場を凍りつかせる。

しかしけいちゃんは言葉を続けた。



「だからって落ち込んでいる俺らじゃないだろ……」


各々の顔がけいちゃんの言葉につられ少しづつあがる。



「追加のデータも揃った。叛逆の狼煙を上げるのは今じゃないか?なぁ……!」











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