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山奥ドライバー ―ping999―  作者: レオン
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エピソード1 『世界大会へ』





『中退すれば履歴書から留年という文字が消えるライフハック』


彼はOwatterにそう残し席を立った。本日はじめての外出だ。


行き先はもちろんコンビニ。ネットゲームへ課金するためのカードを購入するためだ。

彼の一番のお気に入り、トラックのシミューレーションゲームの幅を、いや、己の世界の幅を広げるために足を進める。


このゲームは彼の唯一の世界であり生きがいなのだ。


最近は農場をシミューレートするゲームにもハマっているのだが、特筆すべき点はない。


「ありがとうございましたー」


「…ども…。」


かろうじて彼のプライドが店員との会話に無理やりつなげようとする。

―結果どもってしまうという本末転倒な成り行きに至るのだが彼はそれをやめはしない。

本物の"コミュニケーション障害"は自らが認識できないからこそ発症するのだ。

そしてまた、本日の"人"との会話は以上だ。異常だ。



いや―彼にはこの生活がふさわしいのかもしれない。





なぜなら彼は――留年に疲れ、()退()してしまったのだから。







* * * * * *







18/9/28


Jaja's Truck Simulator 2大会決勝戦当日


ゲームのルールは至って簡単。依頼された荷物を指定の場所に運ぶ――その過程を技術点・芸術点、そしてクリアスピードで評価される。

選ばれた選手はどれもよりすぐりだ。

ここではその選手たちを紹介していこう。


一人目、「ダニエル・ガルシア」


肉体派のボディーで他選手を圧倒するさまはまさに"野獣"。今は日本にホームステイ中のアメリカ人だ。

彼のサポート席にはおっとりとした美人の女性とその愛らしい娘が同伴している。

なぜだか夫は不在なようだが、ダニエルが関係しているのだろうか…。


二人目は「金・玉葱」


プレイヤーネームは「ジン・ユー・ツォン」。トラックで中国一周の旅をしている。中国ではその名を知らないほど有名なプロゲーマー。

歴史やワインに目がなく、トラックを運転するのは主にこのためだ。


三人目は「土本 圭佑」


愛称はけいちゃん。トラックで峠を攻める過激派プレイヤーで、その運転技術は最早誰も敵わないだろう。

荒れた性格と言葉遣いで一見彼に近づくのは危険に見えるが、一人で居ると寂しくなってしまう可愛らしい一面も見せる。


四人目は「」


プレイヤー名が無い――という訳ではないのだが、まだ彼の素性を知るものは居ない。

試合前のインタビューでは「私のことはとりあえずよーむと呼んで」と言っており、とりあえず女性であることがわかる。


五人目は「リー・ミン」


その甘いルックスと、とろけるような声で多くの女性を虜にする危険なプレイヤーの一人だ。

しかし趣味は人形遊びであり、よくOwattarにてその光景が見られるのでファンからは「虚言」と呼び慕われる。


六人目は言うまでもない。「ひょろ」


誰かって?わかりきった愚問だ。山川 ゆうたのプレイヤーネームなのだ。


コンビニから帰った彼はJaja's Truck Simulator 2でこの大会に向け練習をしていたのだ。


そこには"絶対負けられない思い"ただそれが存在した。




学校に負け、親に負け、人生に負けた。これ以上失うものなど無い。




そう思っていた。


だが、この大会で俺はすべてを取り戻すんだ。



トラックの運転手として世界を取る。これが彼の最終的な"目標"。



ゴールが定まっていない人生なぞ、価値がない。俺のゴールは"世界"なんだ…!!


そう固く決心した彼は大会の決勝戦の会場へと足を運んだ。




* * * * * *



「それではひょろ選手の登場です!」



司会の黄色い声がホール全体に響き渡る。

円形に造られたホールは、自然と視線が中心のゲーマーたちに向けられる。

来場者数は2万人。ゲームの大会といえど、これは正真正銘の"勝負"そこに懸けられた思いは人それぞれだ。


憧れ


興奮


喜び


悲しみ


ゆうたももちろん、そのすべてが人をこの地へ誘った。


負けられぬ思いを胸に、壇上へ。一歩づつ――、一歩づつ――


すると見えてきた――今回のライバルたち。


強そうな奴らだが、俺が負けるわけがない。


何かを得るためには、何かを失わなくてはならない。


そう、負けない。



なぜなら俺は――全てを捨ててきのだから!!!!



「――選手?ひょろ選手?」


困惑した司会の声と、観客のどよめき。

うっかりゆうたは妄想ワールドに足を踏み入れていたようだ。


「…すみません…。」


気恥ずかしくなり、歩みが小走りへと変わっていく。

観客の焦燥は、いつしか笑いへと変わっていた。


「ちくしょう…いつもなんで俺ばかりこんな目に合わなくちゃならないんだ…。」


気がつけば愚痴がこぼれる。いつもの悪い癖だ。


ゆうたはこんな性格ではなかった筈なのだ。


変わってしまったのはいつだろう…。





時は2015年2月後半に遡る。


* * * * * *

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