エピソード16 『人形使い』
「――ぼうぼーーー!!!」
熱気。風圧。鼻の奥を灼く灰の匂い。
その全てが静止していた。
その静止した世界で、時間軸に逆らうようにそれをリアルタイムで感じ、この懐かしい感覚をゆうたは噛み締めていた。
――<<ping999>>
脳裏にその文字が浮かび、世界が、時間が逆流する。
鯉が川を登るように、ゆうたは時間をのぼっていた。
景色が逆再生していく様はとても画になっていた。舞う煙が一つに収束し、燃える空気は小さくしぼんでゆく。
そして時は動き出す。
「ゆうた……?」
ぼうぼがキョトンとした目で、ゆうたを見つめていた。
人形はたしかにそこに健在している。八夢は何がなんだかわからないような表情をしていた。
「そういえば……八夢に見せるのは初めてだったよね、俺のラグを」
「え……は……?」
「俺は実は、JTS2をやっているときはなぜだかいつも回線が細くて、よく巻き戻しをしていたんだけどそれを続けて完全に把握しちゃうと逆にラグで有利にことを運ぶこともできちゃうんだ……いつラグが起きるかとかも感覚で感じ取れてしまう」
「つまりあなたは実力ではなくズルしてJTS2の大会まで……アジアランキング2位まで来たわけなの…?」
八夢は信じられないというような顔つきでゆうたを見つめていた。
その表情には驚きと――怒りも混じっていた。
「それには僕も驚きだねぇ……アジア2位の隠された秘密ってわけだ」
「――誰だっ!」
突然知らない声が背後からやってくると思うと、そいつが木の陰から姿を表した。
―「リー・ミン」。
やつはJTS2の大会の選手であったはずだ。
いわばデスゲームに変わり果てたゲームの選手の一人、俺達の敵であることは明白だ。
暫く観察を続けるとリーが仰々しく手を上げ、口を開く。
「おっと、俺はもう何もしないよ。薄々気づいていたと思うがその人形たちはぼくのものだ。僕が作った。」
「―貴様ッ」
ゆうたは憤慨する八夢をどうにか制し、リーに言葉を続けさせる。
「僕は君たちを殺せない。いや、ひょろくんを殺せないというのが正確だろうな。君のもつ力はにわかには信じられないが、目の当たりにしちゃ僕もこれ以上やるつもりはない。それに―」
一瞬間をおいて、ぼうぼの方を見やるリー。そして視線を俺達の方へ戻すと続ける。
「僕は最初から君たちに危害を加えるつもりはなかったんだ。仲間になりたいとさえ思っている。
あのガルシアを倒すためにね」
ゆうたと八夢は息を呑んだ。ガルシアを倒すって―?
やつはあの強靭な鋼のごとく体を持ち戦闘もできるもはや戦闘民族と言っても過言ではないだろう。
それをどうやって―
「君たちが近づいたあれはパイプ爆弾って言うんだ、簡単に作れるが威力はある。ガルシアくんを木っ端微塵にする程度にはね。だから―
僕たちでガルシアを倒さないか?」
つづく




