エピソード14 『一致団結』
「ん………」
意識が覚醒し始めると同時に、頭にドガッという強い衝撃。
「ってぇ…なぁ」
どうやらそこは元いた小屋の中ではないらしい。
暗く、振動がお尻に直で伝わってくる。両手を伸ばせばすぐ届いてしまうような閉鎖空間のようだ。
つまるところ、トラックの荷台か何かだろう。
「なんで俺ァここに……?」
意識が戻り始め、けいちゃんこと土本圭佑は深呼吸をしつつゆっくりと記憶を探っていく。
確か……小屋を発見して…遅くなったから…それで…
そこまで思い出すとけいちゃんは勢いよく飛び上がった。
そして音から察するに、こちらのほうだろうと目星をつけた運転席がある方の壁をドンドンと強く叩きつける。
「おい誰だァ!!居るなら返事しろォ!!なぁ!!」
返答は皆無であった。これで味方が「寝ぼけている俺を無理やり連れて行っている」という可能性は薄くなったと言えよう。
ますますこの状況が危険と感じた土本は脱出を図るため、強行突破しようと出口のあたりの壁を思い切りタックルする。
ズン!と聞こえるほどの衝撃を肩に覚え、土本は選択として諦めを取った。
硬すぎるぜ……なぁ……
途方もない絶望と怒りをどうにか鎮めた土本は助けを待つしかなかった。
※ ※ ※ ※ ※ ※
チュンチュン―
まぶたこそ閉じていたが、そうそう寝れるはずもなくゆうたと八夢はくまを目の下に作り上げぼうぼに笑われているところであった。
「そんなに笑うなよぉ……けいちゃんはどこにいったんだよぉ……」
「トラックを使うくらいなんだから…もうこの近くではないでしょうね…」
するとそこへぼうぼがやってきて、不思議そうに首をかしげた。
「ゆうた……?」
―今、なんて!?
「ぼうぼ!もう一回言ってみて!」
「ゆうた!」
確かに、確かにぼうぼは俺の名前を呼んだ。不思議なことにプレイヤーネームで名乗ったはずだが本名を知っているあたりやはり関係はあるのだろうか。
ともかく、ぼうぼのこの進歩は大きな一歩であり謎を解き明かす鍵の形がようやく見えてきたというわけだ。
と考えていると八夢は不思議そうな面持ちでゆうたに聞いた。
「あなた……本名はゆうたなの?」
「うん……ゲームのマナー的にもプレイヤーネームのほうが良いかなって思ったんだけど、この際もう仕方ないよね」
「そうはいっても私はもとから本名だけどね」
本日二度目の衝撃だった。
よーむが本名だって―!?
次から次へと流れる情報に頭はすぐにパンクの警告ブザーを鳴らしていた。
これは後に聞いた話だが彼女―彼―曰く、「本名だってあまり思われないと思って裏をかいたのよ」と言っていたのでその作戦は大成功だった。
もとよりこいつはプレイヤーネーム「」を名乗っていたわけだが。
「とにかく、けいちゃんを探そう!居なくなったわけもわからないままだし……」
「そうね!見捨てられた―だなんて。もう二度とごめんだわ……」
八夢はどこか悲しそうに言うと、その悲しさを晴らすかのように「よしっ!」と気合をいれた。
ここで士気をあげようかとゆうたはお約束の感動の一致団結を演出する。
「けいちゃんを探しにいくぞ!」
ゆうたが大きな声でそう言うと、二人も顔を見合わせ、それに応じてくれる。
「おーう!」
三人の声がまだ日が昇ったばかりの森に和気あいあいとこだまする。
―その背後に獲物を狙うようなひどくまとわりつく視線に気づかずに。
※ ※ ※ ※ ※ ※
真っ暗な空間にひとつ、青白く照らされた一人の男。
彼の名前は有村 昴。運営の最高責任者のほか、組織『Alice』の司令でもある男だ。
そして彼は渡辺ラボの出身でもある―
「例の建物はもう発見したのかね?」
一人佇む有村に何者かが問う。
「えぇ。革命前夜と言っても過言ではありませんよ」
怪しく照らされた顔には下卑た笑み。これから起こる"革命"の悲願の成就は、彼の人生の成就と言っても過言ではないのだ。
「我々は必ず、人類を次の時代へとシフトさせてみせましょう……」
ゲームの始まりは闇の運命に渦巻き、もうすぐそこまで終焉が迫ってきているのであった。




