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山奥ドライバー ―ping999―  作者: レオン
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エピソード13 『失踪』




「このゲームやりてぇなぁ……」


これは誰だ…。

冴えない顔に、メガネ。髪は短くほぼ坊主だ。

眠たそうなまぶたの奥には虚ろな目、意識がぼんやりとしていて気づくまでに時間がかかったが、俺だ。

中学3年生の俺。

自宅で一人、パソコンと睨めっこしている"山川ゆうた"を見ている"自分"は何なんだろう。


「せや、あいつにやり方聞いたろ」


"山川ゆうた"はそう言って席を立った。

刹那、視界がぐにゃりとねじれ景色がガラリと一変する。


ここは―学校?


ガヤガヤと騒音にまみれた懐かしい教室内で、俺はまた"山川ゆうた"の影を見つける。

会話をしているようで、相手は―あいつだ。

俺にゲームのいろはを教えてくれた古い友人、刈谷 鷹。


この景色にデジャヴを感じた。否、これはデジャヴでもなんでもない。

中学三年の、実際にあった過去の出来事を俺は今見ている。


俺はこの過去が大の苦手だ。


この接触さえなければ、俺はクズの道を歩んでいなかったに違いない。


すると、"山川ゆうた"は刈谷に問うた。


「俺がこのゲームを始めたら、また遊びに行くよ」


やめろ―


「あぁ、勿論おいでよ。いろいろ教えてあげるからさ」


やめろ、俺の過去を見るな―


「俺達、あまり話さなかったけど気が合うよな」


これ以上その男と会話をするな―!!




刹那、意識が現実へとシフトする。

ガバっと体を急に起こした俺は、今がまだ夜中だと認識し、これがあのデスゲームの中であると再確認した。


―嫌な夢だ。


古い記憶を自分の意識の外で掘り返されては、抵抗のしようがない。

夢という不可抗力によって睡眠を邪魔された俺は二度寝する気にもならず、見張りをしているはずのけいちゃんの所へ向かう。

玄関の前で見張ってたよな―と思いつつソファから降り、上に布団代わりにかぶっていた上着を着ながらけいちゃんに状況を確認する。


「けいちゃん、俺もう交代するよ。何事もなかった?」


返答はなく、上着を着終わった俺はそこを振り返る。

見張りのくせに眠ってしまったけいちゃんを起こそう―と思ったが、そこにはけいちゃんの姿はなかった。


「おい、けいちゃん?」


恐る恐る聞いてみるが、やはり返答はない。


もしかして川で用を足してたりして……


可能性はあるため、ゆっくりと足を進め小屋のそばにある川の方に目を向けた。

やはりそこにけいちゃんの姿はない。


まさか……


不安が背筋を這い上りはじめるのを感じた。何かがおかしい、何かがあったのだ、とてつもなく悪い何かが――という、拭いがたい直感。


「けいちゃ―」


その声は言い終わることなく、途中で遮られた。

何者かがゆうたの口を手で塞いでいる。

恐怖によって思考することもままならないゆうたは、声にならない声を口の中でこだまさせながら

とにかく暴れる。


「しっ―。私よ私、八夢。」


声がしたかと思うと俺は開放され、暴れた分消費した酸素をゆっくりと深呼吸して取り戻した。


「なんだ八夢か、けいちゃんの姿が見えないんだ」


「えぇ、知ってるわ。このあたりにも居ないこともね」


「一体どうしたっていうんだ」


「あれを見て」


八夢が指したのは俺達のトラックが駐車してある場所だ。

言われるがまま注視すると…足りない。

けいちゃんのトラックが。


「まさか……僕たちを見捨てたのか!?」


「そうと言っても過言ではないかもしれないわね。女子供を守りきれないと判断したってこともありえるわ」


「そんな……」


けいちゃんは俺がこのゲームに来てから最初に出会った味方であり、心から信頼していたパートナーでもあったと思っていた。


―けいちゃんにとっては違ったのか……?


ニートになって以来、コミュニケーションレベルが乏しい俺にはけいちゃんの失踪が理解が出来なかった。



「けいちゃん……」



そうつぶやき、俺はけいちゃんがいるかも知れない大きな建物、俺達の目的地を見つめ、悲しみに打ちひしがれたのであった。







つづく



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