エピソード12 『運転手の物語』
「兄さんこれ見て!」
私のもとに差し出されたのはひとつの絵だ。
絵と言っても、正確にはポエムが本体だろう。
彼女自身が空を仰ぎ思ったことを綴った、何気ない一つの作品だ。
妹は、これにいつも絵も添える。「詩の味をもっと堪能してもらいたい」からだそうだ。
私はこの時、20歳であった。
俗に貧困層と呼ばれる私達は社会主義という看板の影で暮らしている。
ろくに仕事ももらえず、田舎の農村で酒を飲みながら妹と辛うじて生きながらえてるのだ。
「よくできてるじゃあないか。母さんが生きてたら見せてやりたいよ」
「本当?私、詩で働いて、兄さんと快適に暮らせるようにするね!」
胸が痛くなる言葉だった。もちろん、嬉しい言葉でもあるが妹に働かせて生きる自分に恥じたのだ。
だがその夢も叶わず、妹は栄養失調でこの世を去る事となった。
私は妹の最後の絵を大事にポケットにしまい、この死で真面目に働くことを決意した。
農村に一つだけある古いトラックを借りてその日から青年はせっせと働いた。
そして時は過ぎ―彼が60歳ほどになった頃、彼は立派な家も、家庭も気づきあげ社会に適応し幸せな家庭を築いていた、これからもこんな幸せが続きますよう―
その時出会ったJTS2というゲームに、その願いは根から壊されるとも知らずに。
これは一人のトラック運転手の終わりと始まりの小さな物語である。
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「しィっかし、ここはなんなんだろうなァ」
トラックを降りた3人―否、4人は休憩地点に定めた小屋を物色しているところであった。
小屋はログハウス風で10畳はあった。4人に対して十分な広さと言えるだろう。
家具も配置されているが人気はまったくない。以前誰かが住んでいたところを、そのまま放置されたようなホコリの被り方をしている。
ここは誰が何の目的があって建てたものか、もしくは大会側が用意したセットなのか分からないがありがたく拝借させていただくことにする。
「ここはやっぱりセットか?マップの一部みたいな……」
「そうね……以前人が住んでいたなら家具とかでここがどこかわかるかもしれないわね」
「っていってもよォ……そんなんで判断できるやつここにいンのか?なぁ」
三人で頭を抱えると、ぼうぼがきょとんとしたような顔をし、頭をかしげる。
その仕草が愛らしくて、ゆうたはつい見とれてしまう。
するとけいちゃんがトラックの荷台から運んできたダンボールから菓子パンをぼうぼに投げてやる。
受け取ったぼうぼは何かわからないような顔をしていたが瞬時に食べ物と理解し、一口で食べてしまった。
ぼうぼびついてわかったことは、会話はできないが意図は通じる。食欲が人一倍ある。そして、ゆうたによくなつく。
棺桶から出した時に名前を呼ばれたときから、この子はもしかしたらその昔俺の知り合いか何かだったのでは…と疑い始めたが、やはり記憶に無いのであった。
あたりは段々と暗くなって、もう月が出始めている。
八夢が大きなあくびをしたときにけいちゃんが口を開いた。
「とりあえずもう暗くなってきやがったし、寝るか。ここじゃ命は羽より軽い。俺が最初に見張っててやっから、二人は寝てろ。ちょっと経ったらひょろ、俺と交代しろ。なぁ」
「えぇ!?なんで俺だけ!?」
「お前ェそりゃァ決まってンだろ。女子供に精神的な疲労させるわきゃなんねェだろうが。なぁ」
「ってもあいつ男だよ!」
「ぐちぐちいってねェで寝ろ!見張りは一人いりゃいいんだよ」
そういうとけいちゃんは一つしか無い玄関の前にどっかと
あぐらをかき静止した。
ゆうたは仕方なく小さなため息をつき、寝床を探す。
そう、これから始まるのは寝床の争奪戦だ。
候補としてあげられるのはやはりあのベッドだろう。
小さいので無論一人用だろう。まずはそれに目をつける。
紳士的に挙手をして意見をかわそうと思ったその時、八夢が「いっちばーーん!」
と叫んでベッドに飛んだ。
それを真似てぼうぼも「ばーーん!」と叫んで八夢の上に重なる。
二人は暖を求めて肌をより合わせるようにしてくっつきあってそこでようやく落ち着いたようだ。
ナイスショットだったのでまぁよしとしよう。
と、自分の中での怒りにケリを付け、隅にあるソファのようなものに寝そべった。
チープなソファも、案外悪くないじゃないか。
そこで意識が途絶える。
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