挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
山奥ドライバー ―ping999― 作者:レオン
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

1/20

エピソード0 『ラグ使い』






ブロロロッと響く軽快な走音。


煙が舞い、焦燥感が鼻の奥を灼く。


聞こえているのは争いの協奏曲。


路上の戦場を花びらのように舞うトラックが少年――山川 ゆうたの思考を加速させる。

ハァッ…ハァッ…ハァッ…右―!!


眼前に現れたのは正体不明の立体オブジェクト、通常のプレイヤーならその圧倒的な巨躯による事故は必至。しかし彼もまた"ゲーマー"であり…


「――俺はトラックで…!!」


「――世界を取る…!!」


限界に近づいたタイヤが悲鳴のような音を鳴らしながら道路を焦がしてゆく。


視界右上に映し出された『ping 999』の表示。


そしてオブジェクトに衝突する―刹那、俺は元いた位置から数mほど後退する。


しかし、その現象を俺は先読みしていた―


俺はなにもないカーブの手前で左にハンドルを切る。


これが俺の必殺技―


クライアントの処理と、サーバー側の処理の相違によって生み出される軌跡―



俺は"フォレストドライバー(ラグ運転者)"だ。



* * * * * *



"評定:原級留置"



この一文が、彼"山川 ゆうた"の頭を真っ白に染めあげた。


"原級留置"――彼は高校3年生にしてもう一度高校3年生という時間をコンテニューすることになったのだ。


大学を留年するのはわかる。しかし、高校の3年ともなると進学や就職に大きく影響し、


自分の後の人生にダイレクトに反映されるのだ。


――"キャリア重視"で進むならば。




しかし彼は己のステータスをすべて"オンラインゲーム"に割り振りきって過ごしてきた。


事実、彼は去年の10月から全く学校へ通わず単位を1つ落としただけでこの有様だ。


彼はこの春、同学年の友人を卒業式で見送り後輩を同級生として迎え入れることとなった。



当然、彼はその事実を受け入れることができず、周りにも馴染めなくなっていた。

彼はその自らの行動を"留年日記"に記すことにしたのだが、これはその一部である。


4/9 「2日目。人の名前が覚えられない。カバンの中で弁当の液が溢れた」


4/16 「7日目。おれの持ってる教科書がみんなの持ってる教科書と違う」


6/1 「卒業してないのに卒業アルバムと届きましたwwwwwwwwwwwwww」


6/8 「敬語使うやつが増えてきたんだけどこれ馬鹿にされてんのかね」



彼がクラスから浮いた存在であることは想像に難くない。


むしろ、6/8まで出席している彼は相当心が強いのであろう。


その彼が行き着いた先は…




ブロロロ…キュイ…!!!


ブロロロ…


『依頼を受けました。』


「運びますか。」


今話題のシミューレーションゲーム『Jaja's Truck Simulator 2』だ。


2020年、VR技術が大きく進化し今は据え置きハードを使用するようなソフトは一般的ではなく、VRゲームこそがゲーム業界の売りとなっている。


その中でもシミューレーションゲームとして2021年に発売された"JTS"こと、『Jaja's Truck Simulator 2』は全世界でアクティブユーザーを3000万人を超える超人気な作品の1つとなっていた。


―ゲーム内容はただひたすらトラックを運転することのみ。


Jaja'sという会社が唯一だしているゲームで、一作目がないにもかかわらず『2』をつけSNSで話題になることもあった。大本の会社は『Alice』というらしく、こちらも出自も何も不明であった。


ゆうたは発売されて以来このゲームに没頭し、学を忘れ原級留置をもらったのである。

しかし彼には最大の武器であり、また彼のゲームへの執着心の障害でもある難点



回線遅延(ラグ)が存在した。



ただ、彼は最初こそラグに苦しめられていたものの、それを自らのステータスとして極みまで熟知し、それを武器に『jaja's Truck Simulator 2』の功績にて全国3位を収めるにまで習得した。





いつしか彼には"フォレストドライバー(運転ラグ使い)"という二つ名が与えられた。



* * * * * *

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ