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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

死出山怪奇譚集

死出山怪奇譚集番外編 〜introduction for 3rdgenerations〜

作者: 無名人
掲載日:2018/09/15

……満月の日、優太は自分の部屋で一人じっと座り込んでいた。何時もは一緒に居るはずの両親は居ない。

「今日は、あの襖の部屋を覗いてはいけない日だ…。」

幼い頃からそう言い付けられていた。最初は何も知らず、疑問にも思わなかったが、それが人間の性なのか、気になって少しだけでも覗いてみようと思ったのだ。

「だ、大丈夫だよね…」

優太は自分の部屋を抜け出して、襖の部屋に向かった。すると、そこには灯りが付いていた。

「少しだけなら、良いよね?ほら、ここに隙間があるんだし…」

優太は恐る恐るそこから様子を見た。すると…小さいのでよく見えないが、志保が倒れ、茂はそれを見下ろしていた。その口元は赤く染まっている。

「あっ…」

叫び声をあげかけて口をつぐんだ。

そして、向こう側から姿が見えないように這うようにそこから離れ、自分の布団の中で震えていた。


しばらく経って、何かの気配を感じた優太は布団からそれを覗いた。すると、茂がこっちを見て殺気を帯びた笑顔をしている。そして、怨念を込めた声でこう言った。

「決して覗くなと言っただろう…?!」

「あっ、うわぁぁぁ!」

優太は布団から飛び起き、茂から離れようとした。

「ご、ごめんなさい!僕、どうしてもあの襖の先で何をやってるか気になって覗いたんだ…。もう、覗かないから、これからはお父さんの言いつけちゃんと守るから、だから…許して。」

茂は優太に顔を近づけてくる。

「なぁ、優太はそこで何を見たんだ?」

「そんなの…言えないよ…。」

もちろん優太は何をしたのかは知っていた、だか、それを本当の事だと認めてしまうのが怖くて、忘却の彼方へと追いやったのだ。

「いいから言え」 

「あっ……」

優太は考えて、やっと絞り出すような声でこう答えた。

「お父さんは…、お母さんの血を…、吸ってた……?」

すると茂の口元が緩んだ。

「………正解」

「えっ?」

「間違ったら考えたけど、合ってるよ、優太。……そうだ、今からあの部屋に入らないかい?」

優太と茂はあの襖の部屋に入っていった。

そこは思ったよりも広かった。優太はなるべく茂から離れようとしたが、茂は優太の首筋を触ってきた。

「脈はこの辺か……」

「お父さん?」

茂の口元は濡れている。

「夜襲は何度もあるけど、こうするのは初めてだね?フフッ…君は相変わらず旨そうだよ。」

そして、茂は優太の首筋に噛みつき、血を啜った。

あまりにも突然で、優太はどうする事も出来ず、小さな叫び声を上げて、涙を流していた。

そして、口を離した茂は口元に血を着けたまま、笑っていた。

「お父さん?ひょっとして、僕が襖を覗いたからそうしたの…?」

すると茂は優太を抱き締めた。

「それだからと言ってどうする訳でもないさ。ただ

私は優太を怖がらせたらどうなるか、気になっただけなのさ…。」

満月はずっと渡辺邸を照らしていた。



………玲奈は珍しく茂の家で泊まっていた。その日は両親も志保も居らず、二人、襖の部屋で夜を過ごしていた。

「お祖父ちゃんと居れて嬉しいよ!」 

「ああ、そうだな…」

すると茂はどういう訳か玲奈の首筋を触っていた。

「…馬鹿だね、志保はなんでこの日に出ていってしまったのかな…。ひょっとして逃げたか?…まぁいい、そうなれば玲奈が格好の餌食になるだけだからな…。」

「えっ…?!」

玲奈は茂の手を離して後ずさりをした。

「お、お祖父ちゃん…?」 

そして何かを感じた玲奈は襖を開け、部屋から出た。

「玲奈、私から逃げるつもりかい?」

茂も部屋から出た。

玲奈は大きな箱を見つけてその中に入った。茂の声が何処かから聞こえてくる。

「何処だ…?この私から逃れられると思ったのか?

さぁ…今宵の獲物は何処に居るのかい?」

足音はだんだん近づけてくる。玲奈は身体を埋めて、静かに震えていた。

そして、周囲が突然明るくなったと思うと、茂が笑って玲奈の方を見ていた。

「あっ!」 

再び逃げようとしたが、茂の細く、そして力強い腕に捕まってしまった。

「何をするのか言ってないのに、逃げたら駄目だよ?」 

茂は子供のように笑っている。

「玲奈、お前………、可愛いなぁ…。そして、白くて、柔らかくて、温かくて…そして…、旨そうだ。」

「えっ?」

そして茂は鋭い犬歯を見せたと思うと、玲奈の首筋に噛み付き、血を啜った。

玲奈は小さく叫び声を上げて涙を流していたが、その涙も全て啜られてしまった。

「お祖父ちゃん…なんでこんな事を……。」

玲奈はそう呟いたが、やがて眠ってしまった。

「やれやれ、寝てしまったか…」

茂は玲奈を抱え、布団まで運んで行った。

満月は今宵も渡辺邸を照らしていた。


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