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星自身はとくになにもしていない。(絶対に落ちたくないと思っただけだ)
だから星は自分になにが起こったのか? (どうして自分が助かったのか?)それを理解することができなかった。
でも、その理由はすぐに判明する。目を開いた星の視界の先、周囲の状況を確認したあと、星が開いた窓から魔女のいる森のほうに目を向けると、ちょうど家の中の光と外の暗い夜の陰影の境界のあたりのところに、一匹の黒い魚が浮かんでいたからだ。
魚は蛍光色の緑色の光をまとい、(まるで夜の中を泳いでいるようだ)とても強い眼差しをして、森の中の魔女を睨みつけている。
「……魚、あなたが私を守ってくれたのね」
星はほっとした様子で胸を撫で下ろしている。
『君が最下層まで落とされちゃうと、契約に従って僕も一緒に最下層まで落とされちゃうからね。ただそれだけだよ』
魚は素っ気いない口調で(視線は魔女に向けたまま)星にそう答えた。