115
星の両足は地面を踏みしめていない。その両足は空中に浮いている。(身体中に心細い浮遊感を感じる)……でも、このままだといずれ力尽きて星は本当に穴の中に落ちてしまう。(そして一度、穴の中に落ちたら、もう二度と、そこから這い上がってくることはできない)
このままでも十分、星は穴の中に(時間の経過とともに)勝手に落っこちたと思う。でも魔女はそれを許さなかった。
『……この森から、出て行け!!』魔女が再び強い意志(魔力)を放った。
……まずい。森(世界)から追放される!!
星の全身から血の気が引いた。(感じる魔力が硯の予想を遥に超えている。今までとは比べものにならないくらい強烈なやつがくる)まずい。この力は、やばい。このままだと、私、森とか世界どころの話じゃない。きっと『最下層』まで落とされる。
そうなったら、もう海に会えなくなっちゃう。
……それはだめ。
……それだけは、絶対に、いやだ!!
星の意識はそう思った瞬間、魔女の魔力によって吹き飛んだ。(本来ならこれでバッドエンドだったかもしれない)……が、星が目を開けると、そこにはさっきまで星が立っていた場所が、(まるで何事もなかったかのようにして)ありのままの姿で存在していた。つまり、そこは澄くんの家の大きな部屋の窓際だった。(窓は内開きに開いている。そして、森の中には白い服を着た魔女がいる)
……どうして? 私、助かったの?
星はなぜか無事だった。