113
……どこ? どこにいるの?
星はさっき見かけた(自分に魔力をぶつけた)誰か、を探して視界を動かす。いつの間にか風は止んでいるが、雨は止んでいない。星の顔に冷たい雨粒が容赦なく叩きつけられる。星は時折、片手で顔を覆うようにして雨を防いで、なんとか自分の視界を確保している。
……いた。さっき私が見たのは、あれだ。
数分もしないうちに、星の視界がそれを捉えた。
外に見えるのは(雨の降る)凍えるように冷たい冬の森。
その暗い森の木の影に、その誰かは立っていた。
その誰かを見て星が最初に連想したのは黒く長い髪をした女の人の幽霊だった。(むしろその表現そのままの人物がそこにはいた)白い服を着た幽霊がじっと森の木の影からこちらを見つめている。
しかし、その女の人が幽霊でないことは星にはもうわかっていることだった。なぜならその女の人は星に向かって魔力をぶつけたからだ。つまり暗い森の中に住み、魔力を持ち、魔法が使える存在。
……それはつまり魔女しかいない。(それが魚との魔女の契約により、人間から魔女になった星にはよく理解できた)
その魔女は黒く長い髪が(その髪は本当は、きっとお日様の下で見たら、惚れ惚れするくらいに綺麗な髪なのだろう)雨に濡れて自然と顔の部分を隠しており、その顔と表情はよく見えない。
でも、明らかにこっちを見ている。それはわかる。確かに魔女は星に向かってなにかしらの(おそらく、あまり良い感情ではない)強い意志を向けている。