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82 みんなばらばらになる。そうやって、みんな一人一人が自立をして、大人になっていくんだ。……それを受け入れない私のほうが間違っているんだ。

 みんなばらばらになる。

 そうやって、みんな一人一人が自立をして、大人になっていくんだ。

 ……それを受け入れない私のほうが間違っているんだ。


 澄くんの家は思っていた以上にしっかりとした家だった。

 その見た目は家というよりは澄くん自身も言っていた通り小屋と表現したほうがいいかもしれない。

 木造一階建ての丸太で作られた山小屋のような家で、地面と木造の家との間には石畳で作られた土台が見える。そこには短い階段があり、その先には綺麗な木製のドアがあった。土台の上を木製の柵が一周していて、家と柵の間にはテラスのような空間がある。周囲の景色も最高だが、建物自体もとても綺麗で、澄くんの性格なのか掃除も隅々まで行き届いているようだ。

 小屋の周囲には緑色の草木に混じって綺麗な黄色い花が咲いていた。とても綺麗な花だ。その花の名前を星はできれば知りたいと思った。


 辺りは暗い森で、(雨もまだ降っている。暗い夜の雨の森だ)近くにはあの小川の流れる風景が夜の中にうっすらと見える。水の流れる音も(雨の音に混じって)かすかに聞こえる。


 小屋の隣には遠くからずっと見えていたあのとても大きな木が生えており、その木は周囲の森の木々を明らかに圧倒していた。しかもよく見ると、その木は長老のような年老いた木ではなく、とても若い木であるということがわかった。

 冬の寒さや今も森に降り続いている雨にも負けず、その木はとてつもない大きなエネルギーを放って森の中にそびえ立っている。(それが森にまだ慣れていない、ずっと街で暮らしていた星にもわかるくらいにすごい力を持っている、まるでご神木のような大木だった)しかし同時に、どこか悠々ともしていて、なんとなくのんびりとした休日のお父さんのような雰囲気も感じられた。その木はどことなく澄くんに似ているような気もする。


 家族と同じで、木も一緒にいるとお互い似てきたりするものなのだろうか? その思考をきっかけとして、森のことや花や植物のこと、家族のことなどを、あれこれと無秩序に考え始めると星の意識はとても楽しくなり、(本好きの星はこういう役に立たない知識や無責任な空想が大好きだった)そしてなによりも、雨の降る夜の冬の森の空気よりも透明で純粋な思考で満たされていった。

 それはある意味において、星の日課になっている『心の窓拭き』のようなものだった。

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