表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/447

74 第三幕 ……本当の宝物って、いったいなんだと思いますか?

 第三幕 


 開演 ……本当の宝物って、いったいなんだと思いますか?


 森の天気は変わりやすいらしいけど、それはあまりにも強い雨だった。その雨はあっという間に焚き火の火を消してしまった。

 星はすぐに先ほど確認した折り畳み傘をボストンバックの中から出して、それをさした。それは小さな一人用の(ゴシック調の日傘のような)傘だった。

 その傘はデザインが気に入って購入した品だったので、かわいいのだが、機能性に優れず(つまり弱くて小さいのだ)その傘の中に星の薦めで無理やり入った澄くんは星にその体をぺったりとくっつけるようにして、片方の肩だけ、雨に濡れるのをなんとかまのがれていた。

 澄くんは上着のフードをかぶった。

 それから白いバスタオルに包まれた青猫が雨に濡れるのを、可能なかぎり、その腕の中に抱いて防いだ。

 二人は雨の中で(傘の下で)無言だった。

 星の耳には激しく降る雨の音だけが、聞こえていた。


「星、よかったら僕の家にこない?」と澄くんは言った。

 一瞬、星は澄くんの言葉の意味がわからなかった。

「この川の上流に僕の暮らしている小屋があるんだ。もう夜も遅いし、雨も降ってきたし、……なによりこいつをきちんとしたところで休ませてあげたいし、……もし星が嫌じゃなかったら、……どうかな?」と澄くんは言った。


 星は全然嫌じゃなかった。

 だから星は「ううん。全然嫌じゃないよ。私、澄くんのお家にいく」と、その心をありのままに(まるで小さな子供みたいな、もしくは目覚めたばかりのロボットみたいな口調で)言葉にして澄くんに言った。


 どこかで魚が大きなため息をつく音がした。(でもその音は星の耳には届かなかった)

 二人は荷物を持って立ち上がると、そのまま小川の上流に向けて移動を始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ