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 しばらくして澄くんは「少し川の水で顔を洗ってくる」と(なぜか)焚き火の炎を見ながら星に言った。

 そのときの澄くんの表情と態度はどこか不自然だった。(それが自分が澄くんにキスをしたからだと星が気がつくのは澄くんの姿が見えなくなってからだった。星はすぐに気がつかなかったけど、魚は最初から澄くんが星に対してどう接していいかわからずに困っていることを初めからちゃんと見抜いていた。澄くんは火照った自分の顔と心を清めるために、顔を洗いに行くと星に言ったのだ)

 澄くんは立ち上がって、二人の背後にある小川まで移動しようとした。

 青猫は澄くんの腕の中にいる。(青猫は澄くんの腕の中でとても眠そうにしている)

 その際に星はボストンバックから白いバスタオルを取り出して澄くんに手渡した。

「澄くんが使い終わったら、そのタオルで青猫を包んであげて。なんか寒そうだし」と星は言った。 

 青猫の体は星との追いかけっこのせいでぼろぼろで、何度も転んだせいか、土と泥でとても汚れていた。(そのことに星は責任を感じていた)

 本当なら体を洗ってあげられればいいのだけど、澄くんが率先してそうしないところを見ると、冷たい小川の水はそれに適していないのかもしれない。

 それとも青猫の体を洗うのは、まずはその体を焚き火で少し温めてからということなのだろうか? 

 もしかしたら澄くんは(自分の顔だけではなく)青猫の体を綺麗に洗ってあげるために小川まで行ったのかもしれない。(その星の予想は当たっていた。澄くんが戻ってきたとき、白いバスタオルに包まれた青猫の体はとても綺麗になっていた。……その顔はすごく不満そうだったけど)

「ありがとう。じゃあ、ちょっと行ってくるね」

 澄くんは星にお礼を言ってから小川のほうに移動した。(このときの澄くんはちゃんと星の顔を見てくれた。そのことが星はすごく嬉しかった)

 澄くんが青猫と一緒に夜の闇の中に消えて、二人は少しの間、離れ離れになった。

 一人になった星はボストンバックの中から本を取り出し、それを焚き火の灯りで読み、魚に澄くんが戻ってきたら知らせてね、と頼んで、(魚はそれを了承した)やがて(いろんなことに気がついて)自分の空想の世界の中に浸っていった。

 それが二人が再会する少し前の話だった。


「いいの、いいの。気にしないで!」

 ふふっと笑いながら、星は大げさに両手を振って作り笑いをする。

 澄くんがそんな星の横に座ると、なぜか二人はお互い顔を伏せてまた沈黙した。……なんとなくだけど、ちょっと気まずい。

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