表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/447

67

 二人は少しの間、その場でじっとしていた。

 二人はその間、無言だった。

 星は海のこととか青猫のこととか、澄くんに聞きたいことがいろいろあったのだけど、なぜかうまく(いつものように)声を出すことができなかった。


 冷たい冬の風が二人の周囲を吹き抜けた。その風に澄くんがぶるっとその体を震わせた。澄くんは今はちゃんと上半身に服を着ている。それは当たり前のことだった。だって今は冬なのだから。(星はそんなことを澄くんを見ながら思う)

 冬に外で上着を脱いだり、ましてや川に飛び込んだりしたら、きっと風邪を引いてしまう。だからそれはいけないことなのだ。

 そう考えてから、ふと星は自分の頭の中で、暗い川の中に一人で飛び込んで、水の中に深く(とても深い場所に)沈んでいく海の姿を想像した。(その想像を素早く星は振り払った)


「寒いね」とそんな当たり前のことを笑顔で澄くんは言った。澄くんの体はぶるぶると(まるで雨の日の子犬のように)震えていた。

「川に飛び込んだんだから当たり前だよ」と星は言った。星はそれから目の前でぱちぱちと気持ちの良い音を立てている小さな焚き火に小枝をくべた。(それは澄くんが森から拾ってきた小枝の予備だった)

 焚き火の用意をした澄くんの行動はとても素早く正確だった。(迷いがなかった)

 澄くんの森に関する知識はとても豊富で、その動きも手際もてきぱきとしていて、さすが森の中で暮らしているだけのことはあると星は思った。 

 星が森で(一回だけ)焚き火をしたときは(魚の助言があっても)すごく苦労した。でもおかげで星はなんとか一人で焚き火ができるようにはなっていた。

 今度、焚き火をする機会があったら、自分も焚き火の材料となる落ち葉と小枝集めを手伝おうと星は心に決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ