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 変な想像をしては思わず顔がとろけだしそうになるのを星は必死で抑えている。

 蝶よ花よと大切に育てられた純粋無垢な学院のご友人たちと一緒に(もちろん星もそのうちの一人だった)まだ見もしない(体験したこともない)淡い桜色の恋のお話をして盛り上がっていたころが懐かしい。ああ、……私は今、大人の階段を登ってしまったのだ。

 もし星が今もいつも通り(森に行くのではなく)きちんと休まずに学院に登校していたとしたら、明日はきっと一日中この話で盛り上がれるだろう。(海だって喜んでくれるに違いない。その証拠に星の空想の中の海は楽しそうに笑っていた)

 周囲の羨望の眼差しがとても気持ちいい。

『ねえ、そろそろこっちの世界に戻ってきれくれないかな?』

 魚は星にそう問いかけるが、その声はどうやら星には届いていないようだった。星はまだ空想の世界の中にいる。


 そのとき、澄くんが星のところに戻ってきた。(澄くんが戻ってきたら知らせてね、と魚は星に頼まれていたのだけど、魚はそれをあえて無視した)

「星? なにやってるの?」

「え!?」

 星はとても驚いて急いで姿勢を正すとなぜか正座をする。

「……な、なんでもないわ!」

 そう言う星の顔は真っ赤だ。(その赤色の半分くらいは、澄くんに空想にふけっている自分を見られたという恥ずかしさだけではなく、約束を破った魚への怒りが含まれているのだろう。澄くんを見る星の顔は笑っているが、心の中では姿の見えない空想の魚のことを、星は怖い顔をしてじっと睨みつけていた)

 どこか遠いところからくすくすと笑う魚の声のようなものが聞こえる。

「タオル助かったよ。ありがとう。……でも、本当に青猫を包むのに使っちゃってよかったの?」

 澄くんの腕の中には青猫がいた。白いバスタオルにくるまれた青猫は体力の限界なのか暴れることもなく大人しく体を丸くしている。

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